理工系の4割は大学院進学、気になる学費は? 「大学院は保護者が“行かせる”ところではない」
大学院の学費は、学部より安い
大学院に進学した場合の学費は、国立は入学料、授業料ともに学部と同じ標準額です(法科大学院を除く)。公立の学費も国立と大きくは変わりません。 私立の場合、初年度の学費の平均は学部は約136万円ですが、修士課程は約107万円、博士課程は約84万円と安くなります。
学部より安いとはいえ、大学4年間の学費に加えて、大学院で2~5年間分が上乗せになると考えると、大きな額になります。しかし、石原さんは「大学院の学費については、保護者がそこまで考える必要はない」と言い切ります。
博士課程は奨学金が充実
その理由の一つは、さまざまな奨学金制度があることです。 日本学生支援機構(JASSO)のほか、各大学が独自で実施している奨学金制度、民間企業や地方公共団体の奨学金制度があります。JASSOでは、返還が必要な貸与型でも大学院在学中に特に優れた成績を収めると、返還が免除される制度があります。さらに大学院を修了して正規教員になると奨学金の返還が免除されることが決まり、2025年度の新卒採用から適用されます。 大学によっては奨学金制度のほかに、成績や論文が優秀な大学院生に対して授業料を減免する支援制度を設けている場合もあります。 「特に博士課程の奨学金制度は充実しています。優秀な学生に対しては、研究室の教員から民間企業の奨学金制度などを紹介してもらえるケースも多いようです」 博士課程の場合、6割以上が貸与型奨学金を除いた何らかの経済的支援を受けているというデータもあります(文部科学省「博士(後期)課程学生の経済的支援状況に関する調査研究」)。 また、アルバイトをして、学費を稼ぐことも可能です。 「大学院生は研究活動がメインになるので、学部生に比べて自分で時間の調整をしやすく、アルバイトをする時間をつくれるのです」 そもそも「大学院は保護者が“行かせる”ところではない」と石原さんは言います。 「奨学金を申請するなり、アルバイトをするなり、学費のことまで自分自身で考えられなければ、大学院まで行っても、ものにならないと思います。経済的に難しければ、学部卒業後にいったん就職して、社会人を経験してから大学院に入る道もあります。理工系だからといって大学院に進まなければならないと考える必要はありません」 確かに大学院に進学するときには、22歳を過ぎた立派な大人になっているはずです。保護者はあれこれと心配せずに、本人にすべてを任せるべきかもしれません。
石原賢一
教育ジャーナリスト、大学入試アナリスト 京都大学工学部卒。1981年学校法人駿河台学園駿台予備学校に入職。高卒クラス担任、高校営業、講師管理・カリキュラム編成、神戸校校舎長などを歴任したのち、2006年から18年間、入試情報部門の責任者として各種マスコミへの情報発信、大学、高校での講演などを数多く担当。24年3月に退職し、現在は43年間にわたる予備校での経験を生かし、少子化が進むなかで大きな岐路に立っている高大接続の現状や今後についての分析、発信を行っている。
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