トイレの蓋は閉めても意味なし!? ウイルス飛散量は開けっぱなしと変わらず 米研究
アメリカのアリゾナ大学らの研究グループは、「便器の蓋の開閉によるウイルス粒子の飛散量を調べた結果、蓋の開閉でウイルス粒子の飛散量は変わらなかった」という結果を発表しました。この内容について甲斐沼医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
アリゾナ大学らが発表した研究内容とは?
編集部: 今回、アメリカのアリゾナ大学らによる研究グループが発表した研究内容について教えてください。 甲斐沼先生: 今回紹介する研究は、アメリカのアリゾナ大学らの研究グループによるもので、成果は学術雑誌「American Journal of Infection Control」に掲載されています。 トイレの水を流すことでエアロゾルが舞い上がり、周囲の床や壁などの様々な表面に細菌をまき散らすことが、これまでの研究により判明しています。そして、便器の蓋を閉めて水を流すと、トイレ内の細菌の飛散量を抑制できることも知られています。こうした研究がある一方、サイズが小さいウイルスについてもトイレの蓋の開閉が影響するのかが検討されていなかったことから、今回の研究を実施しました。 研究グループは、人体に無害なバクテリオファージを家庭用トイレと公共トイレの便器に撒き、便器の蓋を閉めた状態と開けた状態で水を流しました。その後、便器の中の水や、便座、周囲の壁や床などの表面からサンプルを採取しました。研究の結果、家庭用トイレと公衆トイレ両方で、蓋の開け閉めに関係なく、採取されたウイルスの量に差はないことが明らかになりました。
研究内容への受け止めは?
編集部: アメリカのアリゾナ大学らによる研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。 甲斐沼先生: 便器の蓋を閉めてから水を流すと、水を流したときに発生するミストを便器内に留めておくことができるため、細菌の拡散を防ぐことができると言われていましたが、同様の内容が細菌よりもはるかに小さい粒子のウイルスにも該当するのかどうかについては、いまだ検討されてきませんでした。 今回、ウイルスの場合には、蓋を開けたまま水を流すか閉めてから流すかで、水を流している間のウイルス粒子の飛散量に変わりはないことが研究結果で明らかになり、実生活で応用できる研究内容であると考えられます。さらに、今回の研究は病原体がどのように広がっていくのか、また、感染の連鎖を断ち切るためにどのような対策を講じればいいのかをより明確に検討するのに貢献するものであると考えられます。