朝ドラ『虎に翼』寅子以外の女性判事補・弁護士はいるのか? 戦後初の女性弁護士・渡辺道子さんと法曹界を志す女性たち
NHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』は第12週「女房は掃きだめから拾え?」が放送中。特例判事を務める寅子(演:伊藤沙莉)らがかつて明律大学女子部で共に学んだ大庭梅子(演:平岩紙)と再会して遺産相続を巡るトラブルに立ち向かっている。作中では寅子以外の女性判事補や弁護士が身近にいるわけではなさそうだが、史実では徐々に女性が法曹界に進出していた。 ■寅子のモデル・三淵嘉子らに続く法曹界への進出 寅子のモデルである三淵嘉子さんは、明治大学専門部女子部法科を経て同大法学部に編入し、1938年に卒業。同年に高等試験司法科に合格した。その年の合格者242人のなかには、田中正子さん(後の中田正子さん)と後輩である久米愛さんもいた。そして1年半に及ぶ修習を終え、1940年の正式な弁護士登録をもってこの3人が日本初の女性弁護士となったのである。 では、その後はどうだったのだろうか? 作中でも描かれた通り、間もなく第二次世界大戦に突入する。勉学もままならない過酷な状況に陥り、高等試験そのものが中止された年もあった。それでも、日本女性法律家協会が公開している「協会と社会の歴史」によると、終戦までに8人の女性が高等試験司法科に合格していたらしい。 ちなみに、民事訴訟が激減したことで弁護士としての仕事量が減った三淵さんは、母校である明治大学女子部法科の助手となり、1944年には助教授に昇進して後輩たちの教育に貢献していた。 戦後初の女性弁護士となったのが、渡辺道子さんだ。彼女は明治大学法学部の聴講生となった後、1940年に早稲田大学法学部に入学。そして、1947年に弁護士登録された。渡辺さんは女性の権利や地位向上、家制度からの脱却を普及する活動に注力し、1950年には圧倒的マイノリティーだった女性法曹らの横の繋がりを築く場として「日本婦人法律家協会」(現在の日本女性法律家協会)を設立している。 三淵さんは1949年、34歳の時に東京地方裁判所民事部の判事補に任用されたが、女性裁判官としては2番目だった。では1番目は誰かというと、明治大学の後輩でもあった石渡満子さんだ。 石渡さんは三淵さん、中田さん、久米さんら3人の高等試験司法科合格という快挙に刺激を受け、明治大学専門部女子部法科に入学。1944年に卒業し、1947年に高等試験司法科に合格した。そして、1949年4月、44歳で東京地方裁判所の判事補となっている。女性初の判事補の誕生は、新たな憲法で平等が謳われながらも、旧来の家制度や女性蔑視から抜け出せない社会に生きる女性たちに希望を与えた。 <参考> ■明治大学史資料センター「三淵嘉子(みぶちよしこ)―NHKの連続テレビ小説(朝ドラ)の主人公のモデルとなった女子部出身の裁判官―(法曹編)」 ■神野潔『三淵嘉子 先駆者であり続けた女性法曹の物語』(日本能率協会マネジメントセンター)
歴史人編集部