体の硬さが血管の硬さ…ストレッチと筋トレで心臓力アップ!【40代・50代、心不全パンデミックに要注意!⑤】
近い将来、心不全の急増が予測されている。私たち一人一人が予防するためには高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙、肥満といった動脈硬化の要因をしっかり管理することが必要だ。そして、何よりも適度な運動が欠かせない。今回は、心臓病のスペシャリストである医師の大島一太さんに、健康を維持し、心不全を防ぐための運動について伺った。
体の硬さ=血管の硬さでした!
心不全の大きな原因のひとつが動脈硬化だ。動脈硬化を加速させる最も重要な要因に高血圧、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病が挙げられる。 しかし、これらの生活習慣病は、症状がほとんど現れず、健康診断で異常を指摘されても放置してしまう人が少なくない。このような状態が続くと、将来的に深刻な心不全へと進行する危険があるのだ。 このリスクを防ぐために、特に大切なのが運動だ。 多くの研究で、適切な運動が動脈硬化の予防に効果的であることが示されている。最近の研究では、体の柔軟性と動脈硬化の関係についても注目が集まっている。 「動脈硬化と体の柔軟性には興味深い関連があります。動脈硬化は血管が硬くなり弾力性を失うことで、心臓病や脳卒中、そして心不全のリスクを高めます。 ある研究では、体の硬さが血管の硬さにも影響を与えるということがわかってきました。20歳から83歳までの健康な男女約500人を対象にした研究では、座って脚を前に伸ばした状態で前屈テストを行い、手がどれだけ前に届くかを測定し、そして血管の硬さを調べました。その結果、体が硬い人ほど動脈硬化が進んでいることがわかりました。 このような研究から、体の柔軟トレーニングが血管の健康に非常に重要であることがわかります。柔軟性を維持することで、血管の健康を保ち、心臓病や脳卒中、そして心不全のリスクを減らすことができるのです。 ストレッチには、多くの病気を予防する効果があります。血行がよくなり、筋肉や関節が柔らかくなることで、疲れにくくなり、転倒や骨折といったケガのリスクも大きく減らすことができます」(大島先生) 出典/Poor trunk flexibility is associated with arterial stiffening Heat and Circulatory Physiology;297,1314,2009 ぜひ、日々の生活にストレッチや柔軟運動を取り入れよう。これにより体も心もより健康に保つことができる。 「ストレッチは正しい姿勢を保つ効果もあります。正しい姿勢は体の負担を減らし、腰痛や肩こりなどの慢性的な痛みを予防できます。運動前後のストレッチも大切で、筋肉痛をやわらげ、回復を早めます。また、関節が柔軟になることで、痛みや炎症を防ぐ効果も期待できます」 ストレッチでリラックス効果を高め、ストレスも軽減しよう。深呼吸しながら行うと、さらに効果が高まる。 毎日のストレッチには、首、肩、背中、ハムストリングスという太ももの大きな筋肉のストレッチが効果的だ。 肩を上下させたり、首や肩を回す、両手を前に伸ばして手の甲を上に向けたり下に向けたりする、足首をぐるぐる回す、太ももを後ろに引いて伸ばす、座って上半身を前に倒しハムストリングスを伸ばすなど、一般的によくある全身のストレッチでOK。無理をせず、気持ちよいと感じる程度に体を伸ばすことを日々の習慣にしよう。 「筋肉も血管も、しなやかで柔軟性のあることが大切です。体の柔軟性を維持することで、血管も健康に保つことができ、心血管系の病気や心不全の予防につながります」 無理なく楽しく続けられるストレッチを見つけて、より健康な体づくりを目指そう。