江戸時代の巨匠「池大雅」の名画が韓国で発見…!「80億円を提示されたことも」所有者が困惑する、ヤクザや新興宗教まで参戦する異様な「購入依頼合戦」の内容
韓国人が所有する池大雅の名画
韓国語の看板と外壁が色褪せた古いテナントビル群。ノスタルジーを感じさせる路面市場の近くに、韓国車「Kia」の大型車は停車した。 【写真】こ、これはホンモノなのか!?…「幻の名画」はこちら! 11月上旬、筆者は仲介者を通じて韓国のある不動産会社に案内された。壁棚に花瓶や壺などの骨董品が並ぶ会議室で、社長のチュ・ミョンソン氏は笑顔で出迎えてくれた。 「日本からわざわざ来てくれましたから、特別にお見せします。鑑定以外で今まで誰にも実物を見せたことはありませんでした」 そう言ってチュ氏は、普段は銀行の貸金庫に預けてあるという絵画を机に置いた。 「こちらが池大雅(いけのたいが)の作品です。韓国国内の博物館などで鑑定をしてもらっており、本物であるという結果が出ています。もちろん、鑑定書もあります」 江戸時代の画家である池大雅(1723~76年)は文人画の祖とされる。同時代に活躍した伊藤若冲や円山応挙らとともに、日本美術を変革した画家の一人で、「桜閣山水図」など多くの作品が国宝や重要文化財に指定されている。 そのなかでも、チュ氏が所有する作品は絹の上に水墨で描いた絵画。絹に描かれた作品は珍しく、「世界中を探しても、この作品以外に1点が現存するのみ」だと同氏は言う。
本物ならば国宝級
なぜ、日本の画家である池大雅の作品を韓国に住むチュ氏が所有しているのか。「明確な経緯は私にもわからない」としながら、チュ氏はこう語る。 「第二次世界大戦中、父は日本軍の補給員として文化財などを扱う部署にいたそうです。その父からの情報をもとに、日本統治時代から韓国で船主をしていた祖父が何点か気になった美術品を購入したみたいです。そのなかで、'83年に他界するまで、『これは大切な物だからキチンと保管しておくように』と父が口酸っぱく言っていたのが、この絵画でした。 ただ、誰の作品なのかは伝えられていませんでした。父が亡くなったときに私はまだ10代でしたから、どれほど貴重な絵画なのか判別できず、家のなかに普通に置いたままになっていました」 それから約40年後、転機は'20年頃に訪れる。当時はコロナ禍で韓国の景気はどん底、チュ氏の事業も苦しくなった。資金を作ろうと考えたチュ氏は、自宅にあった絵画の価値を調べることにした。 手始めに絵画の右上に漢字で書かれたサインと落款印を写真に撮り、韓国人の専門家に見せたところ「わからない。日本の漢字では?」との返答。そこでツテを頼って釜山大出身の日本人考古学者に直接見せると、答えはすぐに明らかになった。 「日本の有名な画家である池大雅のサインで、本物ならば国宝級だと言われた。なぜ持っているのかと、興奮した様子で聞かれました。このときに初めて凄い絵画だったんだと認識したんです」