世界では水産業が成長産業なのに「海水温上昇」で日本の周りだけ魚が獲れないなぜ
ところが、こういった生産量が減り続けている全体の問題が、マスコミで扱われることはほとんどありません。サンマが、サケが、スルメイカが、サバが、イカナゴが……といった個別の報道では全体像がわかりません。 また、すでに大きく水揚げ量が減っている前年より少しでも増えると、前年比何割増、何倍といった報道になるので、時にはまるで回復したような錯覚を覚えさせられてしまいます。 まだ効果がある水産資源管理が適用されていないので、残念ながら、悪くなっても中長期的によくなることはありません。次のグラフ(水産白書)は日本の漁業・養殖業の生産量が減り続けていることを示しています。
■世界全体と比較してわかる明確な違い 次のグラフは世界全体の漁業・養殖業生産量を示しています。減り続ける日本とは対照的に増加が続いています。青の海面漁業が横ばいなのに対して、ピンクと緑の養殖量が増加していることがわかります。水産物の供給のためには養殖業は不可欠です。 なお青の海面漁業は横ばいで推移していますが、これは魚がこれ以上獲れないので伸びていないということではありません。北欧・北米・オセアニアをはじめ、科学的根拠に基づく資源管理の重要性に気づいている国々は、実際には単年、もしくは数年間は大幅に漁獲を増やすことができることがわかっています。しかしながら資源の持続性を考えて大幅に漁獲を制限しているのです。
科学的根拠に基づき、漁業者や漁船ごとに実際に漁獲できる数量より大幅に少ない漁獲枠が割り当てられています。このため価値が低い小さな魚や、脂がのっていない、おいしくない時期の魚は、自ら獲らないようになる制度なのです。これを個別割当制度(IQ、ITQ、IVQ)などと呼び、譲渡性の有無などによりいくつかのパターンがありますが、乱獲を防ぐという意味で基本は同じです。 わが国でも個別割当制度(IQ)の適用が、2020年の漁業法改正もあり、ようやく増えはじめました。ただし、実際に漁獲できる数量より割当が大きかったり、漁獲されている魚が小さかったりなど、まだまだ運用面での大きな課題があります。また漁業者の方に、世界の漁業で良好な結果を出し続けていて、自身のためにもなる個別割当制度の内容がまだ正しく伝わっていないことは大きな問題です。海外と日本は違うといったことでは、全然ありません。