佐藤琢磨「インディ500」優勝…「イエローフラッグ」を巡って全米で論争
世界3大レースの1つである「第104回インディ500」が23日、米国インディアナ州のインディアナポリス・モータースピードウェイで行われ、佐藤琢磨(43)が2017年以来、3年ぶり2度目の優勝を果たした。「インディ500」は、1周約4キロのオーバルトラックを200周(500マイル)して競う過酷で人気も伝統もあるレースで例年は5月に開催されるが、今回は新型コロナウイルスの影響で3か月遅れの無観客で行われた。 予選3位で1列目スタートとなった佐藤は、一時、13番手まで順位を落としたが、158周目でトップに浮上。スコット・ディクソン(40、ニュージーランド)とのデッドヒートとなり、途中、首位を明け渡したが、173週目にディクソンを抜き、185周目で再びトップを奪った。残り5周で後続のスペンサー・ピゴット(26、米国)が大クラッシュを起こしたため、「イエローフラッグ(コーション)」がふられ、セーフティカーがコースに入ってレースを先導、スローダウンして追い越しは禁止となり、佐藤は1位をキープしたままゴールした。 だが、この「イエローフラッグ(コーション)」の是非が全米で論争となった。 ピットレーンの入り口でおきたクラッシュの救護作業が可能だったため、イエローフラッグ(コーション)でのレース続行が認められたものだが、レース後にディクソンは米メディアのインタビューに答えて、勝った佐藤琢磨へリスペクトを示しつつも、「今回の結果を受け入れることは難しい。最初は、レッドフラッグ(レース中断)が出ると思った。そうなっていれば、最後の4、5周は面白かったと思うけどね」と、「イエローフラッグ」の判断に疑問を呈した。 地元のインディースター紙は、「インディアナポリス・モータースピードウェイのオーバルで再び信じられない終盤のレースとなり、日曜日のインディアナポリス500の走りはクライマックスらしさに反して、論議を呼ぶイエローフラッグの下に終わった」と報じた。同紙は、別記事で「2020インディ500、『もしも、こうだったら』で終わるが、佐藤琢磨は『勝者に値する』」との見出しを取り、こんな見解を伝えた。 「ディクソンの車の方が良かったのでは? インディカーは104回目のインディアナポリス500をイエローフラッグでのフィニッシュを止めるべきだったのでは? といったあらゆる異議を好きなだけ唱えればいい。佐藤琢磨は(優勝セレモニーで)脂肪分2%の牛乳を一気飲みし、(牛乳で)ずぶ濡れになる間に(その論争を)終わらせるだろう。なぜなら、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのドライバーで、日本の誇り(の佐藤)が日曜日、今後何年も語られるだろうインディ500を制してチェッカーフラッグを受けたからだ」と、主催者の判断と佐藤琢磨のレースぶりを支持した。 米ヤフースポーツも、勝敗を分けたスペンサー・ピゴットのクラッシュについて触れつつ、「佐藤が勝利を手にした追い抜きは、残り20周以上のところであった。佐藤はディクソンの先を行き、レースで最後のピットストップに入ったときも、その差を維持していた。佐藤のピットストップはディクソンよりも早く、最後の数ラップで周回を誘導されるまでディクソンからの追い抜きのチャレンジを寄せつけなかった」と終盤の戦いを評価。 「もしレースがグリーン(フラッグ)のままであれば、ディクソンは佐藤を抜けただろうか? そうかもしれない。だが、佐藤は、その前に、ディクソンを寄せ付けず、ピゴットのクラッシュが起きる前に彼らの間に周回遅れの車を入れることができていた。確かにディクソンは、終盤のラップまではレースを支配していた。彼は200周のレースで111周をリードし、佐藤が彼をリードするまではベストな走りをしている車と見られていた」と、議論に決着をつける見解を示した。 佐藤は、「率直に言って驚きに満ちた1日でした。この気持ちは言葉では言い表せません。全員に心から感謝しています」とコメントしている。