佐藤琢磨インディ優勝の快挙の裏で日本人差別的投稿の記者が解雇の事件
米国の自動車レース、インディアナポリス500(インディ500)が28日、インディアナポリス・モータースピードウェイで決勝が行われ、アンドレッティ・オートスポート所属の佐藤琢磨が日本人として初めて優勝する快挙を成し遂げたが、その裏で、米国人のスポーツ記者が人種差別的な発言をしたことを理由に解雇になるという事件が起こっていた。 この記者はデンバーポスト紙のテリー・フレイ記者。日本人である佐藤がインディ500で優勝したことに不快感を示し、人種差別を含む内容をツイッターに投稿したことから、雇用主であるデンバーポスト紙が即刻、雇用を打ち切ったもの。 フレイ記者は佐藤の優勝が決まった直後に「メモリアルウィークエンド(戦没将兵追悼記念日の週末)に、日本人のドライバーがインディアナポリス500で勝ったのは、私にとって不快感を覚えるもの」などとツイート。米国は、29日が戦没将兵に祈りを捧げるメモリアルデーという祝日で、その週末に日本人の佐藤が優勝したことで、同記者は感情的になっていたようだ。 このツイートが投稿された直後から、SNS上では人種差別発言だとして炎上。 「これはとうてい受け入れられない発言。デンバーポスト紙はただちに何とかするべき」。「最低の選択、人種差別的態度。フレイをクビに」など、一般読者からの厳しいメッセージが立て続けに投稿された。 フレイ記者は28日になって謝罪。 「これはメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)についてのものだ」とし、佐藤の優勝に不快感を示したツイートを削除した。さらに「私は謝罪します」とのツイートを掲載。長文の謝罪文のなかには、フレイ記者の父のチームメートだったアメリカンフットボール選手が沖縄で戦死したこと、戦争から72年が経過していることなどから、「感情的な週末に、ばかばかしいことを引用してしまった。誤りを犯してしまった。タクマ・サトウに謝罪する。自分自身に憤っている」などと書き綴った。 しかし、時すでに遅し。人種差別発言をした記者に対するデンバーポスト紙の対応は素早かった。5月29日の午前中に「フレイ記者はもはやデンバーポストの記者ではない」とする声明文を発表した。 「私たちは、我々のレポーターの1人が無礼で、とうてい受け入れられないツイートをしたことを謝罪します。テリ-・フレイはすでにデンバーポストの従業員ではありません。我が社の規定に基づき、これ以上の社員に関するコメントはいたしません。あのツイートは、我が社の信念でもなく、我々を表すものでもありません。我々の心からの謝罪をみなさんに受け入れていただけることを望んでいます」 フレイ記者が、日本人である佐藤の優勝に不快感を示したこと、人種差別発言をしたことからデンバーポスト紙を解雇されたというニュースは、全米の多くのメディアが取り上げた。 米NBCニュース電子版によると、「佐藤は米国で最も知られているイベントであるインディアナポリス500で勝った最初の日本人ドライバー。佐藤はフレイのコメントについては沈黙を守っている」と、佐藤がフレイのツイートに関してはコメントしていないと伝えた。 ワシントンタイムズ紙は、「フレイ記者の父親が第二次世界大戦の退役軍人であり、フレイ記者は毎年、選ばれるコロラドのスポーツライター賞に4度選ばれた」といった情報も付け加えて報道。 ワシントンタイムズ紙の記事には100件以上の読者コメントが投稿された。投稿には、毅然とした態度で解雇したデンバーポスト紙に処分を当然とする声が多数あった。 英国のガーディアン紙も、佐藤がインディアナポリス500を制した直後に、フレイ記者が差別的な内容のツイートをし、デンバーポスト紙が解雇したことを報道している。