レモンポップが有終の美を飾り種牡馬入り ポテンシャルを感じる血統背景を深堀り
【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】 ◆血統で振り返るチャンピオンズC 【写真】レモンポップのこれまでの軌跡 【Pick Up】レモンポップ:1着 父レモンドロップキッドはアメリカのクラシックレースのひとつベルモントS(G1・ダート12ハロン)を含めてG1を5勝。その母チャーミングラッシーは大種牡馬エーピーインディの4分の3同血(父が同じで母同士が親仔)という良血で、キングカメハメハやエルコンドルパサーと同じくキングマンボを父に持ちます。この系統は芝とダート、距離の長短に関して融通性があるのが特長で、キングカメハメハなどはその万能性を体現した種牡馬でした。レモンドロップキッドもよく似ており、芝、ダート、オールウェザーでそれぞれ複数のG1馬を誕生させています。 レモンポップは「レモンドロップキッド×ジャイアンツコーズウェイ」という組み合わせ。この2頭はいずれも芝・ダート兼用タイプですが、レモンポップ自身は重心の低い筋骨隆々とした馬体なので、ダート向きの資質が表れています。2代母ハーピアは大種牡馬デインヒルの全妹。こうした血が入ることにより大レース向きの底力が補われています。 「父レモンドロップキッド、母の父ジャイアンツコーズウェイ、母方の奥にダンジグ」という配合構成は、スピンスターS(米G1・ダート9ハロン)を勝ったロマンティックヴィジョンと同じです。 レモンポップと同じくレモンドロップキッドを父に持ち、母方にストームキャットを持つアポロキングダムは、現役時代に下級条件馬だったにもかかわらず、種牡馬になると上々の成績を残しています。決して優れているとはいえない繁殖牝馬を相手にJRAの勝馬率が40%を超えているのは見事です。来年から供用されるレモンポップには、それよりもはるかに上等な繁殖牝馬が与えられるはずなので楽しみです。 ちなみに、アポロキングダムの代表産駒アポロビビ(さきたま杯4着)は、母方にレモンドロップキッドの近親エーピーインディが入るので、チャーミングラッシー≒エーピーインディ3×3という4分の3同血クロスが生じています。注目したい配合パターンです。 ◆血統で振り返るステイヤーズS 【Pick Up】シュヴァリエローズ:1着 ディープインパクト産駒の優勝は2019年のモンドインテロ以来5年ぶり2頭目。1着の回数は少ないのですが、2着4回、3着2回なので、連対率31.6%、複勝率42.1%と優秀な成績です。 母ヴィアンローズは3歳時にノネット賞(仏G3・芝2000m)を勝ちました。このレースは夏のドーヴィル開催に組まれている3歳牝馬の重賞で、6月の仏オークスのあと、10月にロンシャンで行われるビッグレースとの間に使ってくる馬が多いので、メンバーが揃う傾向があります。ヴィアンローズが勝ったときはG3でしたが、現在はG2に格上げされています。 繁殖牝馬としても優秀で、これまでにJRAで走った13頭中9頭が勝ち上がっています。本馬の4分の3弟にあたる現2歳馬カザンラク(父シルバーステート)は、11月9日の東京芝1800mの新馬戦を逃げ切りました。また、シュヴァリエローズの全姉ローズノーブルは、現役時代に3勝クラスまで出世し、繁殖牝馬としてジュビリーヘッド(父ロードカナロア/函館スプリントS2着2回)を産んでいます。 3600m向きのステイヤー、といった血統ではありませんが、GII勝ちのある地力の高さ、折り合いに不安のない優れた操縦性、そして本格的なスタミナを問われる厳しい流れにならなかったことが吉と出たのではないかと思います。最後の5ハロン「58秒9」は、1986年以降では3番目に速い上がりでした。