LIVGOLF来季参戦決定~香妻陣一朗が切り拓く日本人プロゴルファーの新たな道
海外で分かった日本の優れもの
LIVは出場人数が少ないため、海外の一流選手と回る機会が常にある。それに加えてコース外でも刺激を受け、収穫は少なくなかった。プレー面では、トレーニングの回数を増やしたことなどにより、飛距離が伸びた。刺激となったのがケプカのトレーニング。スタート前でも重い負荷をかけ、強度の高いトレーニングを続けているのを目の当たりにした。「朝から大丈夫なのかな、と思うくらいケプカはやっていた。ジムでしゃべったとき『俺はこれくらいやっても大丈夫なんだ』と言っていて、自分も意識が変わり、量を増やした」と話す。以前はシーズン中に週1度程度だったが、現在では週3度。ドライバーショットで15~20ヤードほど飛ぶようになった。 今シーズンは2月のメキシコでの開幕戦を皮切りに米国や英国、サウジアラビアや香港、シンガポールなどを経て、9月の米テキサス州での最終戦まで14試合が実施された。本格的な海外転戦でさまざまな文化や人々との触れ合いを通し、性格面でも変化があった。「例えばサウジでお酒がなかったとか、文化の違いを感じる。いろいろな国に行くようになって、意外とどこでもできちゃうんだなと思った。そして自分の許容は大きくなった気がする。プレーでもそうだし、それ以外でも、他の人に多少無理なことを言われても、そういうのが当たり前なんだと思うようになった」と30歳の香妻は自己分析した。 海外に出たことによって、日本の良さを悟った。日本食のおいしさ以上に痛感したのが、宅配便制度の充実。日本では時間指定で次のゴルフ場へキャディーバッグを送っていた。「海外ではそんなこと、まずあり得ない。海外の選手たちはいつもバッグは自分たちで運んでいる。指定した時間に必ずバッグが着くのは、本当にすごいんだなと思った」。キャディーバッグには大事な商売道具が入っているだけに、神妙に語った。
先駆者としての高み
このほど朗報が舞い込んだ。来季のLIVに出場できることが発表されたのだ。所属チーム「アイアンヘッズ」でキャプテンを務めるケビン・ナ(米国)から電話があり、来年2月にサウジアラビアで行われる開幕戦を前に、米ネバダ州ラスベガスに集合して練習やトレーニングをする計画が伝えられた。メンバーとして溶け込み、日本の先駆者としての意識も芽生える。「LIVの各国選手たちからは日本人イコール僕というのは認識されていると思う。PGAでは松山(英樹)さん、LIVでは僕というのを言ってもらえたら、そういう立ち位置にいれるんだと意識はする。日本に帰ったときも恥ずかしいはプレーできないなとか、上位でプレーしなきゃなという気持ちになる」。言葉を証明するように、帰国出場した8月のSansan・KBCオーガスタ(福岡)では2年ぶりとなるツアー3勝目を挙げた。 サウジアラビアは人権軽視を問題視されることもあり、LIVには当初から反発が起こってPGAと対立していた。昨年6月に両団体が和解し、事業統合することで合意したとの発表がなされたが、11月末時点で具体的な進展は報告されていない。それでも、帰国した際には日本の選手たちからLIVの出場方法や強豪たちと回った感想など、よく質問を受ける。「賞金額や大会フォーマットはすごく魅力的なので、おのずといい選手たちが集まってくると思うし、競争は激化している。そこに負けないくらいの技術、レベルに自分もいなきゃいけないし、今のままでは駄目だなという認識はある」とモチベーションを口にする。 12月はスポンサーへのあいさつ回りなどをこなし、家族との時間を満喫する予定。本格参戦2年目の2025年。次のように目標を掲げた。「優勝したい。パット、アプローチは通用する感覚があった。長い距離を残したときにどれだけチャンスにつけられるかが重要なので、ロングゲームに磨きをかけたい」。〝世界のジーニー〟になる日は近づいている。
高村収