【MM Another Story:「Turbo」はやっぱり特別だ!】シリーズの頂点「ポルシェターボ50周年」をル・マン24時間レースとともに振り返る
19勝のうち17勝はターボエンジンで成し遂げられた
最高峰のハイパーカークラスに実に23台ものマシンがエントリーした、2024年の第92回ル・マン24時間レースは凄まじい盛り上がりを見せた。 単に台数が多かったからではない。最終的に9位までの4メーカーのマシンが同一周回で争う激しいバトルは、耐久というより24時間のスプリント。比喩ではなく本当に、最後の最後まで目の離せないレースとなった。 今年の勝者は2年連続優勝となったフェラーリ。2位にはわずか14秒差でトヨタが入ったが、下馬評では今年、優勝にもっとも近いのはポルシェだった。 WEC(世界耐久選手権)では、第1戦でワークスの「ポルシェ・チーム・ペンスキー」が勝利しただけでなく、第3戦をカスタマーのチーム「JOTA」が制するなど絶好調。そして実際に予選では、ケビン・エストレ選手が素晴らしいアタックを決めてポールポジションを獲得していたから、復帰2年目のポルシェの年になるかと思われたのだが、結果は4位が最上位。表彰台にも手が届かなかったのだった。 実際、予選の後にもドライバー達は決して楽観的ではなかった。コーナリングで強さを見せる一方で直線スピードで見劣りする963は、直線が長く速度域も高いサルテサーキットでは、競り合いも考慮すれば決して最速ではないというわけで、実際にその懸念が的中してしまったのだ。 ポルシェはこれまでル・マンで19回の総合優勝を果たしている。つまり、今年優勝できていたならば記念すべき20勝目だったことになる。そして、これは意外に感じられたのだが、今までの19勝のうち17勝はターボエンジンで成し遂げられたのだという。 確かに、自然吸気エンジンが使われたのは最初の2勝を挙げた917のフラット12だけだった。その意味で言えば、ポルシェの栄光の歴史はターボエンジンによって形作られてきたと言っても過言ではない。
「ターボ」が意味するのは「あらゆる意味で最上級」であること
量産車に目を向けてみても、やはり「ターボ」はひとつのアイコンとなっている。御存知のとおり、911シリーズを見れば今やカレラに積まれるエンジンもターボチャージャー付きだが、最高峰に位置づけられているのは、現在もやはり「911ターボ」である。 それどころかタイカンや新型マカンのようなBEVでも、トップレンジには「ターボ」が据えられている。これについて、ターボエンジンを積むわけでもないのに、などと言う向きもあるが、ポルシェにとって「ターボ」とは最上級、あるいは究極を示す言葉なのだ。 そんなポルシェの「ターボ」最初の1台となる911ターボが発表されたのは、1974年10月のパリモーターショーだった。そう、今年はポルシェターボ50周年ということで、ル・マン24時間レースに続いてポルシェは「ポルシェ ターボ50周年」と銘打つワークショップを開催した。 用意されていたのはミュージアムが所有する4台に新型車が2台の計6台の「ターボ」。招待を受けた私を含む各国のジャーナリストが、それらを乗り換えながらゴールを目指し、その歴史や意義を振り返ったのだ。 最初にキーを受け取ったのは、まさにその最初の1台、ポルシェ911ターボ。水平対向6気筒の空冷エンジンは、排気量をベース車の2.7Lから3Lへと拡大した上でターボチャージャーを装着することで、最高出力260psを発生し、最高速度は250km/h以上を達成していた。 ちなみに当時の911カレラは2.7L自然吸気エンジンを積み最高出力は210ps、最高速度は240km/hという時代である。