【MM Another Story:「Turbo」はやっぱり特別だ!】シリーズの頂点「ポルシェターボ50周年」をル・マン24時間レースとともに振り返る
1975年式の試乗車は走行14万km超ながら、かなりのレア
話題を集めたのはそのパフォーマンスだけではない。911ターボは前205/後225という当時としては極太のタイヤを履かせるべく前後フェンダーが拡大され、全幅は約12 cmもワイドに。そして車体後部にはホエールテールとも形容された大型スポイラーが備わり、ルックスもきわめて刺激的に仕立てられていた。内装もレザーを奢った豪華な仕立てで、まさにラインナップの最高峰に相応しい存在感を発揮していたのだ。 1975年式の試乗車は走行14万km超で内外装の程度はそこそこ。しかし最初の生産ロットの内の1台という希少な個体だった。 初めて乗ったターボ3.0は、確かにターボラグが強烈だった。排気量があるので低回転域でも走れなくはないが、レスポンスは緩慢。アクセルを全開にして3000rpm回転に到達しても、いや4000rpmでも、まだ反応は鈍いままだ。 ところがそこを越えたあたりから急激にトルクが盛り上がり、レスポンスが鋭くなる。オッと思ったら、あとは一気にトップエンドまで炸裂するのである。額面上のパワーは今や大したことなくても、この加速は超刺激的。やみつきになるとは、このことである。 マニュアルトランスミッションは4速で、タイトな山道は苦手というイメージがあった。だがポルシェシンクロは効きが強力で、1速まで遠慮なく使うことができたし、加速の息が長い分、エンジンの鼓動を存分に味わえた。 サスペンションはしなやかで、トラクションも不満なし。飛ばせば前が浮き上がる感じもあるが、それも今となっては味と言えるもので、心から楽しめた。とは言え、きっと1975年にこの走りの印象は強烈すぎるほどだったに違いない、と思いを巡らせたのだった。
刺激は穏やかになるも驚くほどの洗練ぶり
次に乗ったのは、1989年式の944ターボである。直列4気筒2.5Lターボエンジンは、最高出力250psで、最高速度は260km/hとされる。 排気量は911ターボ3.0より小さいのに低回転域でもトルクのツキは十分で、ターボラグは感覚的には3分の1くらい。過給ゾーンに入っても、どこかに飛んで行っちゃいそうとは思わせないが、回したなりの快感はちゃんとある。この洗練ぶりが15年という月日のなせる技だ。 理想のFRスポーツと言われたフットワークは、操舵に対する反応が正確で、旋回中はニュートラルな姿勢を保ち、そして立ち上がりではしっかりリアに荷重がかかる。サスペンションストロークがたっぷりしているので、乗り心地も良い。速度が上がってもフィーリングに変化がないのだ。まさに教科書的と言えるが、そのぶん刺激は薄めかなというのが、率直な印象である。 続いて乗ったのは初代カイエン のトップモデルであるターボS。2002年にデビューするや、あのポルシェが?という驚きとSUVの概念を変えるスポーツ性で大ヒットとなったカイエンに2006年に追加された。 最高出力521psを発生するV型8気筒4.5Lツインターボエンジンを搭載、約2.4トンという車重にもかかわらず、0→100km/h加速が5.2秒、最高速度は270km/hという怒涛の速さを発揮した。 意外だったのは着座位置の高さ、そしてストローク感のある乗り心地だった。現行モデルに較べると当時は格段にSUVっぽい雰囲気、走りだったのだなと時の流れの速さを実感させられたのだ。 この重い車体を軽々と加速させるエンジンは、さすがの迫力である。低速でゆるゆる走らせている時には余裕綽々。右足の動きに即応するレスポンスも心地良い。それでいてトップエンドに向けては、二次曲線的に盛り上がるパワーと突き抜けるような吹け上がりを堪能できるのだ。