「背中が痛く、体が重い」神奈川県にある“有名な廃トンネル”に足を踏み入れると…心霊スポットを巡るバイク旅YouTuberの恐怖体験
一切の街灯がなくなった…ここを本当に進んでいいのか
その後は本厚木駅前のビジネスホテルに行き、夜になるのを待ったのだが、この日は撮影用のカメラが不具合で動かず、撮影に行くことができなかった。出鼻を挫かれて一回休み。 翌日はさっそく新しいカメラを買いに行き、準備万端で夜を待った。僕は諦めの悪い男だ。 夜になり、ようやく廃トンネルへ向かう。カメラの扱いが難しいが、なんとか撮影はできているようだ。山道を進んでいくと、街灯がどんどん少なくなっていく。廃トンネルがある山は、そこ全体が心霊スポットとされている。恐らくもうテリトリーに入っているのだろう。今のところ僕に霊感などはないと思うが、なぜかそう感じる。 道はどんどん狭くなっていき、ある十字路を境に一切の街灯がなくなった。本能的にブレーキをかけ、立ち止まる。ここを本当に進んでいいのかと自問自答しながら進んでいく。 山道は曲がりくねっているので、暗さと相まって先がまったく見えない。背後が怖い。後ろを向いちゃだめだ。スマホで地図を確認すると、間違いなくこの先にトンネルが存在するらしい。
「落ち着いて。大丈夫。大丈夫」「俺は大丈夫。深呼吸して」
暗闇を走り出して数分しか経っていないはずだが、パニックで時間の感覚がおかしかった。バイクのライトが右端に崩れた廃屋を映し出す。けれど見ている余裕すらない。街灯のない夜道をバイクで走ったことくらいはあるのだが、この場所は何かが違う。全身を何かおぞましいものが包む感覚。一瞬でも気を抜くと暗闇が襲いかかってきそうだ。 こんな感覚は人生で初めてだった。ヘッドライトが照らす頼りない光だけが唯一の味方だ。光が当たっていない闇が怖い。バイク旅をしたいと思っていたのに、「なんでバイクで来たんだ」と自分を恨み始めていた。すべてが剥き出しのバイクは、僕の精神状態をさらに追い込んだ。 一人で心霊スポットを訪れることがこんなにも恐ろしいのかと、軽く見ていた自分を呪った。何十回も帰ろうかと思ったが、もはや停まることも怖くてできない。 「落ち着いて。大丈夫。大丈夫」 恐怖のあまり自分自身に話しかけ始めたが、これが思いのほか恐怖心を和らげてくれた。 「俺は大丈夫。深呼吸して」 その後も無心で自分に話しかけ続け、気が付くと道は二車線ほどの広さになっていた。 すると前方に大きな灰色のゲートが見えてきた。 「あれだ……」