高知東生「弱みがバレたら男じゃねえ」ヤクザの親分の息子として育ち“認められるため”薬物へ…今語る“男らしさ”に縛られない生き直し【国際男性デー】
■「男だから、女だから」でなく「一人の人として」相手と向き合う
宇田川:そんな中、依存症の問題を抱える人たちの自助グループにつながった。 高知:ストレスが溜まっても、薬物に頼らない新たな自分で生きていきたかった。自助グループで、回復の道を歩んでいる先輩たちがメンター役になってくれたおかげで、自分の過ちや、自分を苦しめてきた考え方と向き合えた。話しながら喧嘩もしたし、理解できないこともあった。旧型の自分、「男たるものは」という考えと、新しい自分とが混ざり合ってる時こそが、すごくしんどかったけれども、あれがなければ、今の自分はないね。 僕の場合、薬物がこれから止められるかどうかより、どちらかというと、自分の「生きづらさ」や勝手な妄想、そういう認知のゆがみが大きかったんだなと気付きました。 宇田川:その大きな要因が「男らしさ」についての考え方だったんでしょうか。 高知:ジェンダーをテーマにした番組に呼ばれて、「へ?」と思われるかもしれないけど、「男らしさって何?」って本当に思うね。よく考えたら、これまで自分の都合のいいようにその言葉を使っていた。何かしたくないときに、「こんなこと男にできるかよ」と言い訳をするとかね。何かをしたい時は、別に「男だから」って言う必要ないもんね。 僕の場合、目の前で何か起きている場合、「人としてどう考える?」という言葉を使うようになってから、すごく冷静に物事を考えるようになったんです。 宇田川:「男」でも「女」でもなく、1人の人間として向き合うということ? 高知:目の前に荷物を重そうに持っている人がいるとします。「男だから持ってあげよう」「女だから持たなくていいんだ」とか、やっぱりその基準が分からない。であれば、僕の場合、もう「男だから、女だから」と言葉さえ使うのをやめようと。1人の人として考えたら、すごく目の前の人をリスペクトできるし、いま生きやすいんです。 「人として」と考えてとった行動で、相手に心からありがとう、と言われると本当に心地いいんだと気付きました。それまでは、「男だからやらない」「女だからお前やるべきだ」というのが当たり前だった。まるで演歌の世界だよね。 当時の家族もそうだし、歪んだ認知だった僕に関わってくれた人たちを、どれほど傷つけ、迷惑かけたかと思うと、僕が生き直すということは、残りの人生の償いなんですよね。きれい事じゃなく、本当の自分に向き合って、ありのままで生きようということ自体が償いなのかなって思うわけですよ。 宇田川:11月19日は国際男性デーとされています。同じように「男らしさ」について、生きづらさを感じている人もいると思います。もしヒントを伝えるとしたら、どんな言葉を届けたいですか? 高知:信頼できる人に、勇気を持って全てをさらけ出して話してみる。そうしたら意外と、相手も「私もあるよ」となるかもしれない。そうすると、どれほど楽か。「人にこう見られたい」じゃなく、どう見られてもいいじゃない。実際、他人って本当に気にしてないし、そういうものを作り上げる恐怖っていうのは、全部自分なんだよね。 だからこそ、もし苦しんだり、自分に閉じこもったりという人は、信頼できる人にどんどん話してほしい。弱みを見せることは“恥”でもない。逆にそれは“価値”であって。その方がかっこいいし、強いよって僕は言ってあげたいですね。 宇田川:今のお話、本当にかっこいいです。お話を伺えて、本当に嬉しかったです。 高知:今は、「男」というのを外して、「人として面白いですね」と言われるのが一番嬉しいかもしれないですね。俺、あと5時間しゃべりますけど、どうします?
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日テレ報道局ジェンダー班のメンバーが、ジェンダーに関するニュースを起点に記者やゲストとあれこれ話すPodcastプログラム。MCは、報道一筋35年以上、子育てや健康を専門とする庭野めぐみ解説委員と、カルチャーニュースやnews zeroを担当し、ゲイを公表して働く白川大介プロデューサー。 “話す”はインクルーシブな未来のきっかけ。あなたも輪に入りませんか? 番組ハッシュタグ:#talkgender