シリアの軍事目標250カ所以上を攻撃...「50年ぶり」に緩衝地帯に入り、一線を越えたイスラエル軍の言い分
<アサド政権崩壊に乗じてシリア各地を空爆するイスラエル軍。その目的と「首都ダマスカスに接近」報道の真偽は?>
イスラエルのラジオ局軍事特派員が伝えたところによると、イスラエルはシリアで250以上の軍事目標を攻撃したという。 【写真】【動画】夜空を照らす炎、激しく損壊した小型飛行機の尾翼にはシリア国旗が...イスラエルによる激しい攻撃のあと 反体制派がシリアのアサド政権を打倒した後、イスラエル国防軍は50年ぶりにシリアとの非武装緩衝地帯に入り、イスラエルに対して使用される可能性のある兵器を排除するための攻撃を行っている。 イスラエルのラジオ局ガレイ・ツァハルの軍事特派員ドロン・カドシュは9日、X(旧ツイッター)に「アサドの軍隊、その戦車、飛行機、ヘリコプター、船舶、防空システム、ミサイル、軍事工場、情報施設、そしてシリア政府軍が数十年にわたって保有し、構築してきたものすべて」が空爆で破壊されていると書き込んだ。 初期の報道では、イスラエル国防軍の戦車がシリアの首都ダマスカスに近づいていると伝えられていたが、同軍は声明で本誌に対して次のように述べた。「イスラエルの戦車部隊がダマスカスに進軍したとされる報道は虚偽である。イスラエル国防軍は以前述べたように緩衝地帯内に駐留している」 イスラエル軍は12月8日、ミサイル保管施設、防空システム、兵器製造施設、化学兵器施設を攻撃したと、タイムズ・オブ・イスラエル紙が報じた。 本誌はシリア外務省に電子メールでコメントを求めた。
<非武装緩衝地帯へも派兵>
イギリスに拠点を置く人権擁護団体「シリア人権監視団」は、イスラエルがシリアの多くの武器庫や軍事検問所を標的にし、100回以上の空爆を行ったと報告した。また、イスラエル軍の戦闘機がラタキア県の防空大隊、タルトゥース県のバニヤス地区、リフ・ディマシュクのカナケルにある第121旅団の陣地など、シリア各地の弾薬庫を狙って一晩中空爆を行った、と発表している。 イスラエル軍はダマスカスでも空爆を行い、アルシェイク山付近にある旧政権の観測所や軍事拠点を占領したと伝えられている。 イスラエルが攻撃したとされるシリアの拠点の一つは、ダマスカスにある化学兵器製造施設との関連が疑われる研究センターだった。 アメリカのシンクタンク戦争研究所(ISW)も、イスラエル空軍が12月9日にシリアで空爆を行ったと報告している。 ロイター通信によれば、イスラエル・カッツ国防相は「地対空ミサイル、防空システム、地対地ミサイル、巡航ミサイル、長距離ロケット、沿岸ミサイルなど、シリア全土の重戦略兵器を破壊する」と述べた。 ゴラン高原のシリアとの非武装緩衝地帯への派兵に関して、イスラエル軍はこう述べていた。「緩衝地帯への武装勢力の侵入を含む、シリアでの最近の出来事の後の状況判断に従い、イスラエル国防軍はゴラン高原のコミュニティとイスラエル市民の安全を確保するために、緩衝地帯とその防衛に必要な他のいくつかの場所に部隊を展開している」 「われわれは、国防軍がシリアの内政に干渉していないことを強調する。国防軍は緩衝地帯を維持し、イスラエルとその市民を守るために必要な限り活動を続けるだろう」
マヤ・メーララ、ジョン・フェン