独自の睡眠スタイルを進化させてきた。動物たちの眠りの秘密(専門家が監修)
癒やされる寝顔の裏に潜む野生の掟とは?
それにしてもなぜ私たちは動物の寝顔でこんなに癒やされるのか。 「野生動物の目力はかなり強いものですが、寝ているときは目を閉じており、無防備に見えるからでしょうか。ただし、一見無防備に見えても、実は警戒を緩めておらず、天敵接近の気配を感じると一瞬で覚醒し、逃げるか戦うかを瞬時に選択します。これは動物の眠りの特徴の一つであり、専門的には“可逆性が高い”といいます。これは、起きている状態にすぐ戻れるという意味。対照的にヒトの眠りは“可逆性が低い”ため、不意に起こされるとしばらく寝ボケている。野生動物がそんな隙を見せていたら、天敵の餌食になるのが関の山でしょう」 癒やされる動物の寝顔には、野生の掟が隠されているのだ。
ホッキョクグマは疲れて寝ている
北極圏の生態系の頂点に君臨するのが、ホッキョクグマ。好物はアザラシだ。ただ温暖化で北極圏の氷が溶けると氷上での狩りが難しくなり、不得手な水中での狩りを強いられる機会が増えた。 ホッキョクグマは夜間に眠り、昼間に活動する昼行性だが、水中での狩りは疲れやすく、アザラシが氷上にひょっこり現れるのを待つ間、昼間でも眠りこけることがあるようだ。このホッキョクグマは疲れ果てて空腹なのかもしれない。
ネコの仲間は木で寝るのがお好き
トラ、ヒョウ、ライオンといったネコ科の大半は肉食のハンター。なかでも最強の呼び声も高いトラは無敵ゆえに安全性より寝心地を重視し、ベンガルトラは風通しの良い乾いた草地で悠々と眠る。 一方、ヒョウは用心深く、食事も睡眠も樹上で済ませる。ライオンは“プライド”という群れで生活するが、群れごと樹上で眠ることもある。ネコの仲間には珍しく果物が主食のビントロングは、大きめの枝にうつ伏せで眠るのを好む。
ラッコは手をつないで眠る
海に棲む哺乳類・海獣の一種ラッコ。哺乳類で肺呼吸しかできないため、息ができるように眠るときは海面で仰向けになる。その際、潮流であらぬ方向へ流されないように、海藻を巻きつけて眠ることもある。 愛くるしいラッコは水族館の人気者だが、水槽ではカラダが固定できる海藻は見当たらない。流される心配もないが、野生の習性で位置を保つため、一緒に飼育されている仲間と仲良く手をつないで寝入ることもある。