史上最年少ファイナリストのサニブラウンはメダルを獲得できるのか
朝から冷たい雨が降っていたロンドン。気温14~15度という寒さのなかでも、世界選手権が開催中のロンドン・スタジアムは熱気に包まれていた。決勝種目を除くと、大会6日目(8月9日)をヒートアップさせたのは男子5000m予選に登場した地元の英雄、モハメド・ファラー(英国)と、男子200m準決勝に出場した18歳のサニブラウン・ハキーム(東京陸協)だった。 この日はイブニングセッションの前に日本チームによる「中間総括」の囲み取材があった。そこで男子100mの日本記録保持者でもある伊東浩司強化委員長は、最も印象に残ったレースにサニブラウンの男子100m予選を挙げた。「世界全体のなかでも評価できる価値のあるもの。期待が現実に変わろうとした」と話していたが、その約5時間後には、本当に“凄い”ことが起きたのだ。 サニブラウンへの期待と注目は日本だけのものではなかった。200m準決勝の選手紹介では、「Exciting young talent」とアナウンスされたほど。世界の陸上ファンが18歳の才能を見極めようとしていた。 2日前の予選は、「前半が思っていたより出なかった」と後半に追い上げての、2着通過(20秒52)だっただけに、準決勝2組で一番アウトの9レーンに入ったサニブラウンは序盤から飛ばしていく。そして、持ち味の後半でも強さを発揮。今大会の100mで4位に入ったヨハン・ブレイク(ジャマイカ)を蹴落として、20秒43(-0.3)の2着でファイナル進出を決めた。 マイペースであまり感情を表に出すタイプではないが、準決勝を突破して、珍しく高揚しているように見えた。一度は記者の前に姿を現すも、「ちょっと着てきていいですか?」とベンチコートを羽織ると、笑みを浮かべて戻ってきた。 そして開口一番、「ラッキーという感じですね。後半は誰も来なかったので、そのまま行けるかな、と思いながら走りました。今日は最初の100mを集中して、いい具合で出られたので、そこが良かったのかなと思います」と笑顔でレースを振り返った。 前々日の予選は、「無心」で臨み、気づいたときには遅れていたという。それだけに準決勝では「スタートから100m」を意識。「直線に出てリズムに乗れば、そのまま刻めるので」と後半は自然体で駆け抜けた。雨のなかのレースで寒さも心配されたが、「今年の日本選手権も雨でしたし、あまり気にならなかったです。いつも通りタイガーバームを塗って、熱々の状態で臨みました」と動揺はなかった。