働きやすい工夫が詰まった“次世代オフィス”!社員がやる気になる大改革の舞台裏
前例踏襲主義を壊せ~「出る杭」を伸ばして年収3倍も
前例にとらわれず、やり方を見直そうと、全工場で取り組んだのが、知恵を絞ってカラクリで作業を改善する「ちえくり改善大会」。 椅子の生地を裁断する滋賀第2製造部・中井杏菜もアイデアを応募した。生地を重ねて、まとめて裁断するのだが、これが重労働。カットする場所までは引きずるしかない。20キロの生地を力任せに移動させていた。「大変です。汗をかくし力尽きて(腕が)痛くなります(笑)」(中井)という作業だった。 中井は「魔法のじゅうたん」と呼ぶシートを手作りし、「ちえくり改善大会」に応募した。実は作業テーブルには穴が空いていて、ここから風が出ている。生地だけだと風が通り抜けてしまうが、下にこのシートを敷けば少し浮き上がり、軽々と移動させられる。 ちょっとしたアイデアだが、これで作業時間が1日に80分も短縮できた。中井はこのアイデアで金賞を受賞した。 「賞金は50万円でした。現金でいただいてビックリしました」(中井) さらに湊は、社員のやる気を生み出す制度改革にも乗り出す。従来の社員の査定評価では、例年、平均より評価の高いBの社員が80%以上。ほとんどの人がBだったのだ。 「平等というのは必ずしもフェアではない。頑張っている人も頑張っていない人も平等にBと評価されれば、頑張っている人からすると『だったら頑張らなくていい』ということになってしまう」(湊) そこで湊は5段階ではっきり差をつける評価制度に変えた。上から5%、15%、60%、15%、5%とそれぞれの割合を決め、競争心を植え付けたのだ。 また営業部員に対して、年間成績にそったインセンティブを支給するようにした。 福岡支店営業本部・吉村尚樹は「100万円近くもらいました。給与明細のメールを二度見しました」と言う。100万円は2024年に挙げた結婚式の費用になった。 「頑張ったぶんだけ報われる。ちゃんと評価してもらえることはモチベーションの一つになります」(吉村) 中には年収が3倍に跳ね上がった営業マンもいる。こうして、わずか2年でイトーキは体質を変え、かつての開拓精神を取り戻した。