4年半ぶりの日中韓首脳会談では『未来志向』の経済協力で合意:米大統領選挙後の国際情勢を睨む面も
4年半ぶりの日中韓首脳会談開催に3か国それぞれの思惑
5月27日にソウルで、岸田文雄首相、中国の李強首相、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領による日中韓首脳会談(サミット)が開催された。3首脳はいずれも日中韓プロセスの「再スタート」を強調し、関係改善に向けた意気込みを前面に打ち出した。 経済から安全保障まで幅広い議題を扱うこの会談は、2008年から原則として年一回の持ち回りで開催されていた。しかし、2019年12月の中国・成都を最後に、しばらく開催されてこなかった。新型コロナウイルスの感染拡大や、日中間での東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出の問題、日韓間での元徴用工問題など、2国間の政治問題がその開催を阻んできたのである。 今回、4年半ぶりに日中韓首脳会談が開催されることになった背景には、各国それぞれの思惑があると考えられる。半導体など重要分野においては、日韓は米国などとともに、サプライチェーンの再構築に動いている。さらに米国からは、半導体関連で中国への輸出規制を要請されている。しかしながら、安全保障に関わる一部の重要物資を除けば、両国ともに中国との貿易拡大に期待しているのである。 バイデン米政権は5月14日に、中国製電気自動車(EV)への制裁関税を、現在の25%から100%にまで一気に引き上げるなどの措置を打ち出した。これに対して、中国は事実上の報復の動きを見せている。中国商務省は19日に、日本、米国、欧州連合(EU)、台湾から輸入する一部化学製品に対する反ダンピング(不当廉売)調査に着手した、と発表した。調査対象は、自動車部品などに使われるポリアセタール樹脂と呼ばれるプラスチック製品だ。 日本がその対象となったのは、昨年、先端半導体、半導体製造装置の対中輸出規制で米国と足並みを揃えたことの報復だろう(コラム「米中対立が追加関税の報復合戦に発展する可能性」、2024年5月21日)。 こうした点も踏まえ、日本には対中政策においては米国と完全に足並みを揃えている訳ではないことを説明し、中国からの制裁回避と関係改善を狙う意図も、今回の会談にはあるのではないか。