AIブームで急成長の「ディスコ」どんな会社?
AI向け半導体が活況を呈するなかで注目されているのが、半導体を製造・加工する企業です。その一つであるディスコは、半導体を「切る」「削る」「磨く」工程でオンリーワンの技術力を有し、世界でもトップシェアを誇ります。圧倒的な付加価値によって、同社はどのぐらい稼いでいるのか? 決算書を読むと、驚異の利益率がみえてきました。 佐伯良隆『100分でわかる! 決算書「分析」超入門 2025』より一部抜粋・編集してお届けします。 【表で理解】業界他社と比べ高い営業利益率を誇るディスコ
■驚異的な付加価値で平均年収1500万円! ディスコは、1937年に広島県呉市で、工業用砥石の製造・販売を行う「第一製砥所」として創業しました。現在は、精密機器を加工する装置の開発・販売を行い、特に半導体製造装置で世界トップシェアを獲得。国内の精密機器メーカーと比較すると、売上規模は大きくないものの、営業利益、営業利益率、時価総額の高さはトップ3に入ります(→下表)。 直近の業績をみると、生成AIブームによる半導体需要の急増などにより、売上は5年間で2.2倍に拡大。当期は、前期比8.2%増の3076億円で過去最高を達成しました。
しかしそれ以上に驚きなのは、平均60%超という粗利率の高さです。同社の決算説明資料によると、「当期は、為替影響による追い風のほか、高付加価値製品の需要増」により、粗利率がさらに上昇。これに伴い営業利益は前期比10.0%増の1215億円、最終利益は同1.6%増の842億円となり、いずれも4期連続で最高益を達成しました。 一方で、費用はどうでしょうか。販管費を調べると、直近5年で1.8倍に増加したものの、売上に占める販管費の割合は6ポイント減。販管費を約2倍に増額してもなお、販売費率が低下するほど、ここ数年の売上の伸びが急激であることが読み取れます。
また、販管費のうち、最も大きな割合を占めるのが人件費で、当期は296億円(34.0%)を割いています。有価証券報告書によると、同社の平均年間給与は約1507万円。国税庁の調査では、国内の平均年間給与は458万円ですから、平均の3倍以上の高給です。 ところが、同社の労働分配率(※)を計算すると19.6%しかありません。経産省の調査では、国内製造業の労働分配率の平均は46.6%なので、27ポイントも低い値です。これは平均の3倍以上の給与を出しても、労働分配率を低く抑えられるほど、同社が生み出す付加価値が莫大であることを意味します。