生活がどんどん便利になる!~「日本流」アマゾンの全貌
アマゾンジャパンは2000年にサービスを開始。当初は従業員60人ほどの会社だったが、チャンはネットビジネスに挑戦したいとP&Gから転職した。すると実力が認められ1年で社長に抜擢された。 シアトルの本社でベゾスに初めて会ったのは社長就任の数カ月後。その席で突然、奇妙な質問を受けた。「ところで東京には、窓ガラスが何枚ありますか?」と言うのだ。 チャンは突然の奇妙な質問に戸惑いながらも、「東京は4人家族が多く」「窓ガラスは一部屋に平均5枚くらい」「会社の数は……」と喋りながら頭の中で計算し、答えを出した。「なるほど」と言ってベゾスは微笑んだと言う。 「アマゾンはやったことのないことをやる会社。次に行くためには仮説が必要です。『仮説をどう立てるか』『冷静に対応できるか』を見ているのかなと思いました」(チャン) ベゾスのお墨付きを得たチャンは三つの成長戦略を掲げて走り出す。
一つ目が「品揃え」。チャンは新刊本を揃えながら古本も大量に取り込んだ。これでアマゾンはあらゆる本が買える最強の品揃えとなった。 東京・練馬区の古書店「草思堂」は、一般的な書店には売っていないレアな古本をアマゾンに出品している。古本はバックヤードにも3万冊が山積みに。袋に入れて大事に保管されていたのは、挿絵が版画になっている1949年発行の木版画草紙「おせん」。販売価格は14万5000円だ。 出品の作業は簡単。古本のバーコードを読み取り、本の状態や値段を記入するだけ。だから大量の本が出品される。 「集客数がアマゾンと店舗とでは全然違うので、出したらすぐ売れる場合もあります。1時間以内に売れるものもあります」(「草思堂」中尾彰伸さん) 成長戦略の二つ目は「低価格」。アマゾンが始めた「送料の無料化」はもともと苦肉の策だった。日本には「再販制度」と言うルールがあり、本の割引販売はできない。そのために捻り出したアイデアだったのだ。 これを前面に打ち出したのが2007年に始めた「アマゾンプライム」。会費を払って会員になれば本以外の商品も送料無料になるというサービスだ。 「『アマゾンプライム』をアメリカ以外で初めて導入したのは日本です。スピードや利便性を強化できたのが大きかった」(チャン) 成長戦略の三つ目はその「利便性」。チャンがこだわったのは配送スピードだ。世界に先駆けて、当日配送を含む「お急ぎ便」を開始。そのために全国に25以上の物流拠点を作るなど、配送効率を上げていった。