細字ブームの中あえて太字シャープペンを出したのはなぜ? トンボ鉛筆の新作「モノワーク」の開発秘話
◆濃く書けるのに消えやすい、相反する機能を実現した新開発の「1.3mm芯」
芯も今回、「モノワーク用 HB/B」を新開発しています。 「芯の作り方は、従来の0.5mm用などと同じなのですが、成分の配合などを見直して、平たく言えば、黒鉛の粒子が崩れやすいようにしています。よって、紙に黒鉛が付きやすくなって、濃く書けます。 マークシート用紙の読み取りに用いられる光学式マーク読取装置は、黒鉛に光を反射させて、塗られているか塗られていないかを判別するので、黒鉛の塗布量が多いことが、読み取り精度の向上につながるんです」(渡邊さん) 芯の濃さはHBに関しては規格が決められているけれど、それ以外に関しては、例えばBならHBより濃ければよいということになっています。そこで、この「モノワーク用 B」に関しては、通常のBよりも濃くしているそうです。 つまり、0.5mmのBより、このBのほうが濃く書けます。「弊社の0.5mmの2Bくらいの濃さになっています」(渡邊さん) また、トンボ鉛筆としては、昔から、消しゴムで消えやすいという点も大事にしているポイントです。さらに今回は、マークシート用ということで、きちんと消えるというのは、濃く書けるのと同じくらい重要になります。 「“よく消える芯”という点に非常にこだわりました。やはり、グラファイトがより紙面に乗るということは、消したときの消え残りも多くなります。しかし万一でも、消したつもりがよく消えていないという状態になると、マークシートの読み取り時に誤読が発生してしまう可能性があります。 なので、消えの良さに関しては絶対に担保しなくてはいけない。そこはすごくこだわりました」(渡邊さん) 濃く書けること、しっかり塗れることと、消えやすさは相反するように思うのですが、そこをクリアしたからこそ製品化しているわけです。ただ、どうやってそれを実現したのかは秘密だそうです。 聞けば聞くほど、よくできたシャープペンシルで、実際、筆者もすでに品薄状態になっている「モノワーク 限定色フルブラック」に濃さBの芯を入れたものを、日常的な筆記具として愛用しています。この柔らかくて、しっかり書ける心地よさは、このシャープペンシルならではだと感じています。 ※受験筆記具は試験の実施主体の規定に従ってください
▼納富 廉邦プロフィール
文房具やガジェット、革小物など小物系を中心に、さまざまな取材・執筆をこなす。『日経トレンディ』『夕刊フジ』『ITmedia NEWS』などで連載中。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方を伝える。All About 男のこだわりグッズガイド。
納富 廉邦(ライター)