阪神・藤浪の治らぬ“ジキルとハイド症候群”……3年ぶりのV字回復を果たせるのか?
阪神の藤浪晋太郎(24)が11日、沖縄・宜野座キャンプで行われた紅白戦に先発、2回を投げて2安打1失点の内容でまとめた。この時期に最速151キロをマークしたが、2つの死球を与えるなど、また今年も藤浪が持つ“ジキルとハイド”の両面が顔をのぞかせた。金本前監督時代のここ2年低迷が続いている藤浪は、今年こそV字回復ができるのだろうか?
151キロと2つの死球の明暗
満場のかりゆしホテルズボールパーク宜野座のスタンドからどよめきが起きる。スコアボードに「150」の数字。1回二死三塁から白組の4番に入った中谷に対して投じた初球ストレートが150キロをマークしたのだ。レフトフライに抑えこんだボールは151キロ。これが、この日のマックスだった。 だが、2回に一死から板山に134キロのスライダーを右中間の芝生席に運ばれるとまた隠れていた“ハイド”が姿を現わす。 続く長坂に投じた初球のスライダーが抜けた。背中を向けて逃げようとした左肩付近をボールが直撃したのだ。 藤浪は、次の社会人Honda出身、ドラフト3位の評判ルーキー、木浪に対しては、左打者にとって死角となるインサイドの膝元に変化球を曲げて、この日、最初の三振を取った。しかし、続く岡崎への初球がまた大きくインコースへ抜ける。岡崎の脇腹をえぐるデッドボール。岡崎は、その場で転倒した。今度は、かりゆしホテルズボールパーク宜野座に「ああーー」という溜息が起きた。 藤浪は申し訳なさそうに帽子を取って謝った。ここ2年、よく見てきた自滅パターンである。結局、植田を143キロのストレートでレフトフライに封じ込んで二死一、二塁のピンチを逃げ切ったが、苦笑いを浮かべて藤浪はマウンドを降りた。 今キャンプからワインドアップ投法を取り入れた。肘の位置が上がりシュート回転するボールが減って今まで以上にボールに角度がついた。 だが、セットポジションからの投球は、まだ試行錯誤しているようで肘が上がりきらずにボールにバラつきが多い。ブルペンでは変化球をコントロールできずに審判の急所をワンバウンドで直撃してしまうような珍風景まであった。 「全体的にバランスは悪くなかった」というのが藤浪自身の紅白初登板評。 ネット裏に陣取っていた他球団のスコアラーは、「やっぱりボールに力があって怖い。右打者は藤浪の打席に入るのが怖いと言うんだ。藤浪は打者から見てテイクバックからのボールの出どころが隠れずにずっと見えている投手。普通、そういうピッチャーはいくら速くても体感はそう感じずに打ちやすいはずだが、見えていて自分に向かってくるボールがあるから逆に怖いらしい。それが藤浪の魅力だから多少のバラつきはあっていいと思う。ただ勝負どころではコントロールはいるし、それが開幕までに、どこまで修正されてくるかだと思う」というものだった。 “ジキルとハイド”を逆手に取れば、それが藤浪の武器にもなる。