阪神・藤浪の治らぬ“ジキルとハイド症候群”……3年ぶりのV字回復を果たせるのか?
今キャンプのブルペンで藤浪を視察した評論家の池田親興氏は、こう見ている。 「セットポジションになるとバランスが悪くボールがシュート回転するのは、おそらく動きに制限が生まれるからだと思う。クイックもしなければならないし、見ているとセットから始動する際の細かい動きを気にかけていた。本来の迫力がなくなってしまい、武器であるはずの長い手足が邪魔になっているように見えてしまう。藤浪に細かいコントロールを求める必要はないと思う。一番、強いボールを投げやすい形、腕を振りやすい形を探せばいいだろう。肉体の変化と疲労、そしてベンチの重圧などの心理的要因も絡まってメカニズムが狂ってしまったのかもしれないが、3年連続で2桁勝利をしたというポテンシャルがある投手なのだ」 藤浪はルーキーイヤーの2013年から10勝6敗、11勝8敗、14勝7敗と順調に結果を残していたが、金本前監督の就任と同時に2016年は7勝11敗、2017年は3勝5敗、昨年はわずか13試合登板で5勝3敗、防御率は入団以来ワーストの5.32と低迷した。評論家の里崎智也氏や、元中日監督の落合博満氏らは、技術的な問題を指摘するが、2016年7月の広島戦であった“161球の懲罰投球”に象徴されるようなベンチからの異常なプレッシャーも心理面に影響を与えていただろう。さらに2017年は11試合(59回)、2018年は13試合(71回)と2軍に落とし登板機会を与えなかった起用法も藤浪の成績低迷と無縁ではなかったと思う。 記憶に残っているのが、昨年の交流戦で西武の辻監督が「こんな凄いピッチャーはいない。簡単に打てない。他のパ・リーグ球団も苦労するよ」と藤浪を絶賛した言葉。“ジキルとハイド症候群”を藤浪の個性だと理解して多少のコントロールミスにも目をつぶって藤浪を信頼、ローテーを崩さず年間25試合以上の先発チャンスを与えてみるのも一つの手だろう。メッセンジャー、西、ガルシアと3本柱が揃い、4番手、5番手の先発競争が激しいが、矢野監督は、藤浪をどう起用するのか。藤浪の能力を信頼して年間トータルでマネジメントすれば、3年ぶりのV字回復も見えてくるのかもしれない。