来年の夢は出前授業?辻発彦さん、野球を通じて得た大事な経験、少しでも還元したい
【辻発彦さんコラム 一所懸命】 継続は力なり、ということでしょうか。今月、熊本県天草市で野球教室を行いました。初めて実施してから、もう20年近くになりました。今年も野球を楽しむ子どもたちの姿を見て元気をもらうことができました。 【関連】辻発彦さんはこんな人 最初は野球による町おこしを企画した地元の青年団というか、有志の皆さんに講演で呼んでいただいたことがきっかけでした。それが当日に台風が直撃して、お客さんがほとんど来られなかったんです。それなら来年もやろうかとなり、せっかくなら野球も教えよう、という話に広がりました。その後は子どもたちの試合をやったらいいねとなって「辻発彦杯」という大会に発展し、今年で10回目を迎えました。 そういえば今年の夏、高校野球熊本大会で天草工がベスト4に残りました。甲子園には惜しくも届かなかったけど、地域は盛り上がったそうです。今回の訪問中に「天草で野球をやっている子どもの技術が上がりました」という声も聞きました。私の活動とどのくらいつながっているかは分かりませんが、本当にうれしいですよ。 故郷の佐賀でも長く野球教室を続けてきました。現役時代から始めて、最初は参加してくれた他の選手に交通費も出してあげられなかったけど「子どもたちのためだから」とお願いしました。その趣旨を理解して、オフの自主トレを佐賀で一緒に行った稲葉篤紀(元日本代表監督)、奈良原浩(現ソフトバンクヘッドコーチ)らが協力してくれました。今では、子どもの頃に参加したことがあるという大人に会うこともあります。 プロ野球選手はオフシーズンになると、所属チームの本拠地や自分の出身地などで野球教室に参加します。プロと間近に触れ合う機会を得る子どもたちにとっては貴重な経験でしょう。佐賀で過ごした私の少年時代は、そんな機会はなかなかありませんでした。それでも、シーズン中に福岡市の平和台球場に足を運んで、西鉄ライオンズの試合を見て興奮していました。プロのスイングでバットにボールが当たる音は、今も鮮明に覚えています。 さて、今年も残りわずかとなりました。今シーズンのプロ野球は、監督を務めていた西武が91敗もしましてね…。その点は残念な1年ですよ。とはいえ、来年の野球界を考えれば、明るい話題も多いでしょう。秋に行われた国際大会「プレミア12」に出場した日本代表は、勢いのある若手の活躍が目立ちました。 来年は、これまでの自分の経験を子どもたちに伝えるような機会があるといいな、とも考えています。できればクラスごとの少人数のような形で話ができるといいかもしれませんね。野球しかやっていない私ですが、少しでもプラスになることを教えてあげられるかもしれません。佐賀はもちろん、どこかの学校で呼んでいただけるなら、ぜひ足を運びたいですね。(埼玉西武ライオンズ元監督)
西日本新聞社