赤ちゃんの爪切りが怖くなくなる!「育児をする人のもうひとつの手」を目指すコンビのもの作り精神
赤ちゃんの小さな爪。そのかわいらしさとは裏腹に、凶器のようになってしまうこともある。爪が薄いうえ、手足をばたつかせるので赤ちゃん自身の顔や、お世話をする大人の肌を傷つけてしまうのだ。新陳代謝も活発なので爪の伸びるスピードも早い。そのため、まめな爪切りは欠かせない。しかし、赤ちゃんの指を固定することが難しかったり、小さい爪にハサミを当てることに緊張したりと、爪切りに四苦八苦するママ&パパは多いという。 【画像】ありそうでなかった爪ケア用品が登場!赤ちゃんの指を固定できるので安心して爪切りができる そんなママ&パパに朗報!ベビー用品の開発・製造をしているコンビから新しいタイプの爪ケア用品「にぎってピタッ!安心つめきりハサミセット」が2024年10月に発売になった。指固定用グリップ「にぎってて」を使うことで、赤ちゃんの指の固定が容易になるという。 「“育児をする人を支える、もうひとつの手”になりたいんです」と話すのは「にぎってて」を開発したコンビ株式会社 グローバルSCDジャパン MDグループの渡辺由枝さん。「にぎってて」がどのようにして生まれたのか話を聞いた。 ■個人の経験によらない商品開発。「使用者の気持ちをいかに理解するかが大事」 渡辺さんは2024年12月にベビーカーの開発部門に異動したところだが、それ以前は中小物用品を扱う部署に所属していた。 「ベビー食器やマグ、爪ケア用品など赤ちゃん周辺の小物類全般の企画・開発を担当していました。コンビで2022年に爪ケア用品購入検討者に対してWeb調査を行なっていまして、このときに86パーセントの人が『子どもの指を傷つけてしまいそう』、84パーセントの人が『子どもが動いて切りにくそう』といった回答を寄せていて、爪ケア用品に対する不安を抱えているということが明らかになりました。爪ケア用品にはハサミ、電動やすり、手動やすり、テコ型爪切りの4タイプがあり、圧倒的にハサミのシェアが大きく、出産準備品として産前に購入されることがほとんどです。しかし、それだけ多くの方が使われるものにもかかわらず、悩みや不安ごとを解消できていない。この課題を解決すべく、開発がスタートしました」 渡辺さんは4歳の男の子を育てる母でもある。となると、自分自身の経験が開発にも役立っているのだろうか? 「そうですね、確かに育児経験がありますから、世のママ&パパがこんなことに困っているんじゃないか?という仮説を立てやすくはあります。でも、私の経験はあくまでも私個人の体験。ママによって、子どもによって経験の内容も感じ方も変わっていきます。そこで調査を行い、使用される方々のことを理解するようにしています」 コンビでは逆さにしても中身がこぼれないベビー用マグ「LakuMug(ラクマグ)」が好評を博しているが、LakuMugを開発したのも渡辺さんだ。 「LakuMugを企画した当時、私に子どもはいませんでした。自分でベビーマグを使ってみて、こういう悩みはないかな?と考えてみたり、子連れがたくさんいるフードコートなどに出向いて、子連れの方たちの様子を観察したりした結果生まれた商品です。開発にあたって個人的な思い込みだけでは駄目で、実態を理解したものでなければ役に立つものは作れないと考えています」 実態を理解する方法として、コンビでは調査を頻繁に行っているんだそう。 「大規模な1000人単位の調査は1年に1回くらいなんですが、『こんなことに困っているんじゃないか?』という仮説を立てたら、実際にどれくらいの人がどんなことに困っているのかを理解するために、随時調査を行なっています。私ども独自の調査グループを持っていて、毎年出産を迎えられる方に登録いただき、アンケートに協力してもらっています。ほかにも、4~9人のママに集まってもらってグループインタビューを取ったりもしています。定性調査と定量調査のどちらもできるようにしています」 個人の経験頼みではないからこそ、多くのママ&パパに支持されるベビー用品の開発につながっているようだ。 ■ミリ単位の調整の繰り返し。すべては「育児をする人を支える、もうひとつの手」になるために 赤ちゃんには把握反射と呼ばれる、手のひらや足の裏に刺激を受けたときに、握りしめる反射動作がある。このため、爪を切るために指を伸ばそうとしても、握り込んでしまう。解決策として思いついたのがネイルケア用品のセパレーターだ。 「ペディキュアを塗るときに、足指を固定するセパレーターのようなものを作ればいいのでは、というのは企画当初からイメージができていました。文献などから把握反射がどういうものなのかを確認して、どうやったら赤ちゃんに負担なく指を固定できて、ママ&パパがケアしやすくなるかを考えていきました。赤ちゃんの指に適した大きさ、形に行き着くまでは試行錯誤が続きましたね。まず、大人の指の大きさはデータがあるんですが、赤ちゃんの指についてはありませんでした。なので、モニターになってくださった赤ちゃんの全部の指の長さ、幅、厚さを1本ずつ計測していって、玉の間隔を調整していきました。玉部分も試作の最初のころは四角い形をしていたんですが、最終的には丸みを帯びた形にしています。赤ちゃんの指を圧迫しすぎず、でも簡単に抜けてしまわないようにしています」 赤ちゃんのことだけではなく、大人の使用感にも配慮している。 「女性男性問わず、誰もが使いやすいようにするため、大人の指を装着する部分を最初はスリット状にしていたんですが、そうすると子どもが動いた拍子に外れてしまうということがあったんです。なので、ブリッジにして、開きやすくなるように穴を開けたことで男性の指でも装着しやすくしました。爪切りって時間をかけたくないですよね。パッとつけられるようにしています」 「にぎってて」を横から見ると、赤ちゃんの指先がくる面と付け根側の面で傾斜が異なっていることもわかる。 「赤ちゃんが握って安心しやすい形にしていますが、握り込んでしまうと指先が下に下がってしまうので、爪切りがしにくくなってしまいます。そこで、指先側は傾斜をつけないことで握り込ませないようにしているんです」 シリコンの硬さも複数試作し、最適な硬さに。色は指先が見えやすいように水色にしている。 「こんなに小さなパーツですが、愛情を込めて、赤ちゃんと赤ちゃんをケアする人の双方が使いやすいものに仕上げています。ハサミも丸い先端と湾曲形状で、赤ちゃんの薄い爪を切りやすい形です。ハサミのキャップにはステンレスの目の細かいやすりをつけています。コンビでは電動やすりも作っていて、そちらもとてもいい商品なんですけども少し単価も高いということもあるので、お手頃な価格でやすりが欲しいという方にもぴったりなものになっています。通常のステンレスの爪やすりは目が粗いものも多いんですが、こちらは非常に微細なものなので赤ちゃんの爪にもぴったりです」 「にぎってて」はハサミとのセットでのみの販売だが、すでに単品でほしいという声もあがっており、前向きに検討したいと話してくれた。 コンビの社名は「“育児をする人と赤ちゃん”というコンビを応援する企業でありたい」という思いからつけられており、ブランドビジョンでも「“育児をする人を支える、もうひとつの手”として機能する」ことを掲げている。 「私はコンビの『育児をする人のもうひとつの手になる』というブランドビジョンが大好きで、それでこの会社に入社しました。私自身も夫が単身赴任中で、夫婦双方の実家が遠方ということで、いわゆる“ワンオペ状態”で育児をしています。育児ってすごく大変なことですよね。こちらの思うようにいかないことばかり。予想外なことが起きたり、不安なこともたくさんあったりします。でも安心して育児を楽しんでほしい、育児がつらいものじゃないと思ってほしい。コンビの商品がママ&パパのもうひとつの手になれるように。爪ケア用品だけではなくすべてのアイテムに対して、その想いを持ちながら企画開発しています」と語ってくれた。 「にぎってて」のパッケージには「爪切り怖くない!」というキャッチコピーが入っている。こう言い切れるのは、きめ細やかな商品開発の工程があってこそ。コンビの爪ケア用品はママ&パパの不安な気持ちに寄り添ってくれるはずだ。 取材・文=西連寺くらら