民間人初の宇宙遊泳に成功した41歳の起業家が語る「完璧な世界」
人類にとって「最後のフロンティア」
スペースXを率いるイーロン・マスクは、このミッションの成功を祝福し、「地球に戻れば、やるべきことが山ほどあるが、ここから見ると地球は完璧な世界に見える」というアイザックマンが宇宙遊泳中に語った言葉をX(旧ツイッター)に投稿した。 アイザックマンの決済会社は、スペースXの出資元で、2021年12月に2750万ドル(約41億円)を投資した。その当時のスペースXの評価額は約1000億ドル(約15兆2000億円)とされていたが、最新の調達ラウンドでは2080億ドル(約31兆6500億円)に上昇した。フォーブスは、アイザックマンの会社が持つスペースX株の価値が、約140%増の6600万ドル(約100億円)に達したと推定している。 ■人類にとって「最後のフロンティア」 ポラリス・ドーンの費用は、アイザックマンとスペースXが折半したようだが、具体的な金額は公開されておらず、一部の報道では数億ドルに達するとされている。フォーブスに宛てたメールの声明で、アイザックマンはその数字が正確ではないと述べつつも、正確なコストについては言及を避けた。 「私個人は、これらの取り組みから経済的利益を得ていない。私はただ、非常に幸運な人生を歩んできて、自分が情熱を注げるテーマに資金を振り向けることができている。その一つが、セントジュード病院への寄付であり、もう一つは、宇宙という人類にとって最後のフロンティアを開拓することだ」 ポラリス・ドーンのミッションには、彼の最初の宇宙旅行とは異なり、より具体的な科学的目標があったという。「我々には3つの主要な目的があった。1つ目は、非常に高い軌道に行って、放射線や微小隕石の破片が散らばる非常に過酷な環境に挑むこと。2つ目は、新たな宇宙服と宇宙遊泳の操作方法をテストすること。3つ目は、新たな通信方法や将来の長期ミッションに役立つ約40の科学実験を行うことだった」 アイザックマンとクルーたちは、地球に帰還してからの数日間、科学者たちと共にバイタルデータを追跡し、すべての臓器の超音波検査などを行った。このデータは将来の宇宙飛行士の準備に役立つ。また、宇宙服からのデータは、スペースXが開発する次世代の宇宙服の設計にも役立つ。 アイザックマンは今、将来のさらなる宇宙への挑戦を楽しみにしているが、同時に地球上の不安定な環境、特に今年の大統領選挙を取り巻く状況を懸念している。 「ここ10年ほどの間は、私が生きてきた他のどの時期よりも世界の分断が進んだと感じている。毎日、政治的な問題についての激しい議論が続き、世界は多くの苦しみに満ちている」と彼は語る。 「でも、時にはその状況から少し離れて、お互いの共通点や共に成し遂げられることに目を向ければ、もっと良い、明るい未来を作り出せるはずだ。そして、バランスが取れるはずだ」と、アイザックマンは語った。
Giacomo Tognini