暗号資産とデジタル証券が激変、日銀注目「預金トークン」と「ブラックロック事例」
ブロックチェーンを使った金融商品にカテゴライズされるものが徐々にマーケットでのプレゼンスを上げてきている。ビットコインなどに代表される暗号資産とは異なり、既存の金融プレイヤーが関与しながら事例が積みあがってきているのが現状である。本稿ではまず、デジタル証券を意味する「セキュリティトークン(ST)」、価格の安定性を実現するべく設計された暗号資産である「ステーブルコイン(SC)」の国内動向を中心に紹介する。加えて、特に日銀が注目し、論文を執筆している「預金トークン」や、このトークンにも関連する「ブラックロック事例」を詳説する。 【詳細な図や写真】年別ST発行状況(2024年6月末払込ベース)(出典:日本STO協会ST発行関係統計2024. 09)
セキュリティトークンの動向とは?
まずは、セキュリティトークン(ST)の動向について説明する。日本STO協会が発表している最新の統計では、2023年の発行総額は約662億円と、2022年の約211億円から比べるとおよそ3倍の発行額である。また2024年については上半期までですでに約473億円であり、このペースであれば2023年の数字を超えることは十分に期待できるだろう。 STの種類としては不動産STの発行が大部分を占めており、そのトレンドは引き続き継続するものと思われるが、丸井グループなどのファンマーケティング要素をもつ社債など不動産とは関係ない事例も出てきており、今後のマーケットの拡大が期待されるところである。 直近で注目すべき事例は、フィリップ証券が発行した映画に関するSTである。直木賞を受賞した真藤順丈氏の「宝島」の映画化にあたり、映画製作委員会への出資で得られる権利をデジタル証券化して、小口販売するものである。 1口10万円から購入可能であり、映画ファンにとっては非常に魅力的な特典が付与されている(以下詳細)。 購入口数と付与される特典の関係 (出典:証券の募集要項(PSJ_ST宝島_ページ増(phillip.co.jp))を元に筆者にて作成) 映画に関するSTには、単なる資金調達だけではなく、顧客とのエンゲージメントを強化する狙いがあることがわかる。金融商品としても、映画などのオルタナティブな投資先を提供している点で魅力がある。 今後こういった新しい魅力的なSTが発行されればより一層マーケットの盛り上がりに寄与することになるだろう。