暗号資産とデジタル証券が激変、日銀注目「預金トークン」と「ブラックロック事例」
ステーブルコインの動向とは?
次にステーブルコイン(SC)の動向について説明する。SCについては現時点でいくつかの取り組みが行われているもののSTほどの盛り上がりには至っていない。先日(2024年10月25日)、発表されたようにようやく日本暗号資産等取引業協会がSCの自主規制団体として金融庁より認定された。 STに関する自主規制団体である日本STO協会が金融庁よりにされたのは2020年5月であることから類推するにSCについてはこれから数年かけて盛り上がってくることになるだろう。 2023年はSCの実証実験の取り組みが報道された。 2023年3月にみんなの銀行、東京きらぼしフィナンシャルグループ、四国銀行の3社共同で改正資金決済法に準拠するモデルでのステーブルコイン発行に向けた実証実験、2023年9月にはオリックス銀行が特定信託受益権型のステーブルコインの実証実験、2023年11月にはGinco、三菱UFJ信託、ProgmatはSCの発行・管理基盤である「Progmat Coin」基盤を活用したSC発行に向けた共同検討を実施する旨を発表した。 この2024年は北國銀行が預金型ステーブルコインの「トチカ」の発行を開始している。2024年10月にはProgmatおよびDatachainがSWIFTと連動した国際送金について取り組むことを発表している。 いずれにせよSCについては新しい取り組みが次々と発表されており、数年後を見据えて進んでいくことになるだろう。
日銀が議論を進める「預金トークン」
ST、SCの議論に加えて最近預金トークンについての議論が行われている。日本銀行は2024年6月に「海外における「預金のトークン化」の取り組みについて」と題したレポートを発表した。 預金をトークン化することでSC同様の価値の安定した決済手段を提供することを目論んでいると考えられる。 当該レポートには「マネーの二重構造」という表現で言及されているが、既存の銀行システムの良さを取り込みつつトークン化のメリットも取り込もうということを視野に入れているということだろう。 国内で発行可能なステーブルコインの場合は、裏付けとなる現金がある意味ロックされてしまうことになるが、預金トークンは「預金口座をトークン化することにより銀行の信用創造機能を維持しつつ価値の安定した決済手段を提供できる」点が大きなメリットになるだろう。 もちろん預金口座を前提にする以上、銀行の関与はマストになることから銀行が携わることによるメリット(銀行が関与することで既存の金融システムとの接続性が高まる)、デメリット(Web3の理念からすると銀行のようなトラディショナルな機関が関与することの是非)もある。 併せてトークンとして取引される金額については、預金口座の残高ときちんと連動させるなどの手当てがマストになることから、国内での実現に向けては実際の仕組みも含めて今後の議論が必要であろう。