古巣阪神への決別宣言。大和はなぜ横浜DeNAへのFA移籍を決断したのか?
必要とされているのか、それとも必要とされていないのか。 野球選手の感性は敏感だ。フロント、現場の空気を肌で感じる。阪神/大和(31)のFA行使、そして横浜DeNA移籍の決め手は、プレーヤーとして最も重要な原点。そのモチベーションにあった。 横浜DeNA大和の入団発表が4日、横浜の球団事務所で行われた。背番号は「9」。3年3億円プラス1年のオプションがついている契約。緊張した面持ちで会見に臨んだ大和は、「野球選手が一番輝ける時期は少ない。チャンスに飛びこもうと決めた」と、決断理由を語った。 高田繁GMは、FA交渉解禁と同時に速攻でアタックをかけた。 「守備でチームの力になって欲しい」 それが口説き文句だった。 「うちはFAで強化するチームではないが、大和選手にはなんとしても来てもらいたかった。内野でも外野でもどこを守ってもゴールデングラブ賞が取れるほどの守備の名手。三遊間の深いところや、ベース寄りのところをアウトにできる。今年はスイッチに挑戦して短期間でモノにした。右、左関係なく打てるのも大きい。ウチは左打者が多いので、左(投手)のところで打線に加わってもらえる。1点をバッティングで取ってもらうのももちろん大事だが、セーフをアウトにするというひとつのプレーで失点を防ぐことができる選手。守備だけでレギュラーが獲れる。バッティングは打率・250を打ってくれれば十分に価値がある」 高田GMが大和に求めたものは明確だった。 ショート、セカンドだけでなくセンターまで球界屈指の守備力でカバーできる能力だ。 今季、横浜DeNAはショートで倉本寿彦、センターは桑原将志が143試合に出場したが、セカンドのポジションは、柴田竜拓、石川雄洋、田中浩康の3人が起用され固定できなかった。大和がレギュラーで狙うのはセカンドだろう。若手の柴田、ベテランの石川は共に左打ちで、右はヤクルトを戦力外になって移籍してきた田中だけ。その田中は、打率・201しか打てなかった。おそらく高田GM、ラミレス監督は対左投手用のスタメンとして大和を想定している。だが、それだけではない。1番・桑原、9番・倉本を我慢して使ったが、来季は彼らが不振に陥ったときでも大和という“ジョーカー”があれば選択肢が増える。 スイッチに転向した今季は打率・280をマークしていた。 そうなえれば、チーム内競争も激しくなるし、終盤に倉本に代え大和の守備で逃げ切るという新しい必勝パターンも作ることができるのかもしれない。 それらの期待を受けて大和は会見でこう話した。。 「守備で一番の評価をいただいたのが横浜DeNAだった。しっかりと守備でアピールしたい。ポジションは現場が決めること。どんな形でもゲームに出られるように。DeNAは若手の選手が活躍しているな、という印象があるが、自信がなければ、ここには来ていない。優勝するためにここへ来た。実力でレギュラーになりたい」 実は、センターラインの補強が切迫していたのは、むしろ阪神の方だった。