【光る君へ】中宮・定子の“早すぎる死”に号泣… 「忘れないでほしい」と願った最期 あえて「土葬」を希望した理由とは?
NHK大河ドラマ『光る君へ』第28回では、藤原定子(高畑充希)が息を引き取る。清少納言/ききょう(ファーストサマーウイカ)が菓子を差し出し、定子が歌を贈るシーンが涙を誘った。史実において、定子はどのような最期を迎えたのだろうか? 彼女が遺した歌には、どんな想いが込められていたのだろうか。 ■「死後も懐かしんでほしい」火葬を拒否し、土葬を希望した定子 一条天皇の中宮となった藤原定子。24歳で命を落としてしまうが、死後、御帳台の帷の紐に遺書が結び付けられているのが発見された。そこに記されていた一首が、「よもすがら 契りし事を わすれずは 恋ひん涙の 色ぞゆかしき」。 意訳すると、「夜通し愛を誓ったことをお忘れではないですよね。私のことを思って泣いてくださるその涙の色とは、いったいどのようなものなのでしょうか」という内容であった。 この歌の他にもいくつか歌が見つかっており、たとえば同じように結び付けられた一首に、「煙とも 雲ともならぬ 身なりとも 草葉の露を それと眺めよ」がある。「煙とも雲ともならぬ身」とは、火葬を拒んで土葬にこだわった彼女の心境を表している。 当時の通例としては火葬が当たり前であったにもかかわらず、彼女の意思によって土葬されたようである。土葬だから、当然のことながら、煙が上がって雲になる訳はない。火葬によって一瞬にして消え去るのは寂しかったのだろう。 未練がましくも、土に還って夫や子供達を見守りたいとの思いがあったに違いない。「その土の上に生える草葉の露を私だと思って、懐かしんでくださいね」との定子の切ない思いが込められた歌であった。 ■最期に残した想いは「怨念」なのか? 実は、それ以上気になるのが、枕の包紙に認められていた歌のほうである。それが、「なき床に 枕とまらば 誰か見て 積らむ塵を 打ちもはらむ」であった。 「積らむ塵を 打ちもはらむ」とは、なんだろうか。恥ずかしながら、その意味は筆者にはわからない。それでも、「積らむ塵」といい「打ちもはらむ」といい、暗に積もり積もった思いを吐き捨てるかのような響きである。そこに怨念の心持ちを感じ取ってしまうというのは、考え過ぎなのだろうか。 失意のまま亡くならざるを得なかった自身の悲運を儚むとともに、そのような身へと追い込んだ人々への恨みをも込めたものだったのではないかと、そんな思いまで抱いてしまうのだ。 ただしもう一つ、「誰かに枕を見てもらいたい」=「忘れないでほしい」との願いを込めたようにも読める。大河ドラマ『光る君へ』では清少納言と定子が「いつも、いつも」と笑い合ったが、清少納言は定子が世を去った後も、想い続けたはずである。
藤井勝彦