4代目ジープ グランドチェロキーには先代モデルとは違った力強さがあった【10年ひと昔の新車】
70年にわたるジープの伝統がしっかりと継承されている
2011年2月、ジープのフラッグシップ「グランドチェロキー」がフルモデルチェンジされ4代目となって日本に上陸した。ジープで初めてエアサスが設定されたほか、セレクテレインシステムや4輪独立懸架など注目点は多かった。今回は上陸後間もなく行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年4月号より) 【写真はこちら】ジープで初採用された最大18度の後席リクライニングシート。また前後ドアの開く角度も67度から78度に拡大した。(全5枚)
4世代目となる新しいグランドチェロキーが日本に導入された。大きな成功を収めた初代モデルから約20年、スタイルこそ洗練されたが、伝統の縦7本スロットグリルや台形ホイールアーチなど、ひと目でグランドチェロキーだとわかるアイコンは健在だ。搭載されたのは、新開発の自然吸気3.6L V6DOHCエンジンのみで、先代のようにV8モデルやSRT8は、今のところない。 試乗に用意されたのは、リミテッドのエアサスペンション装着車。走り出す前にスペックを見て「2.2トンも車両重量があるんだからV6じゃちょっともの足りないかも」と思ったが、それはアクセルペダルを軽く踏み込んだ瞬間、その心配は見事に覆された。この走りの印象は後述するとして先に新しいグランドチェロキーのディテールを見てみよう。 まずは、室内を見渡して気づくのは、インテリアの質感がかなり向上していることだ。インパネには、デザインの段階からレイアウトされたモニターがあり、ドライバーやパッセンジャーが触れる部分にはソフトな素材が使用されている。このソフト素材は触れたときの手触りが滑らかなことに加え、室内のノイズを抑えることにも貢献している。このクオリティの高さは、先代モデルのオーナーが見たらちょっとうらやましくなってしまうかもしれない。 進化している部分は他にも多くある。たとえば、ジープに初めて採用された、車高を最大105mm上昇させることができるエアサスペンションやクォドラトラックⅡ4×4システム。5つの走行条件に合わせた走りができるセレクテレインシステムなども新型の特徴と言える。 さらに、初採用された後席のリクライニングシートやキーが必要ない燃料の給油キャップなどもそう。そこにはワールドワイドな要望へ応えたことに加え、実用性と快適性を追求したクルマづくりという70年にわたるジープの伝統もしっかりと継承されている。そうそう、ジープは今年70周年を迎える老舗ブランドなのだ。 トランスミッションは従来どおり5速ATで、JC08モード燃費は7.7km/L。排気量の3.6Lから考えれば決して悪いデータではないが、だからこそ6速化すればもっとよくなるのでは、と欲張ってしまう。いまの時代はクルマにとって環境性能は欠かすことのできない要素であり、それを全面的にアピールできないのは少々残念だと言わざるを得ない。 例えばメルセデス・ベンツMLクラスにはクリーンディーゼルがあるし、BMW X6やポルシェカイエン、フォルクスワーゲントゥアレグにはハイブリットモデルが存在する。ビッグSUVだからこそ、こうしたモデルの存在は欠かせないはずである。