東大発医療スタートアップ「Provigate」関水康伸CEOインタビュー(下):日本のスタートアップが活かせる「モノ作りの遺産」と地政学的な追い風
新たな血測定法によって糖尿病の発症や重症化の抑制を狙う医療スタートアップ「Provigate」の関水康伸代表取締役CEOは、日本のスタートアップには世界で勝負できる強みがあると語る。ひとつは高度経済成長期からバブル期までに国内で蓄積された高度な機械設備と人材、もうひとつは米中対立という世界的な情勢変化の中で吹く日本への追い風だ。 *** ――医療スタートアップ業界で、特に日本ならではの強みといえるものはありますか? 最近は中国が、資金力や技術力の面で急速にアメリカを追い上げ部分的には追い越しています。特に医療は機微な個人情報を扱うので、西側諸国ではゲノムや疾病履歴等を含むデータの収集は人権に配慮しながら時間をかけて進めないといけません。しかし中国は政府が医療やAI技術開発を推進しており、大量のデータに迅速にアクセスしやすい状況にあります。 その中で日本としては、ヨーロッパやアメリカとの連携が医療業界でも非常に重要になるでしょう。最近、半導体業界では日本への再投資の動きが出てきましたよね。地政学的な観点からも、日本のモノ作りが再評価され始めている。それと同じことが、おそらく医療やヘルスケアの分野でも起きると私は考えています。 例えば私たちが開発しているグリコアルブミン(GA)を測るという手法について、アメリカの企業が今から同じことやろうとしても難しいと思います。なぜかというと、精密なバイオセンサーをスクラッチから開発する技術において、モノづくりの土壌が失われているからです。バイオセンサーの試作品を作るのは、実はものすごく難しい。日本は今でも細かいモノ作りが得意なので、そういうところに勝機があります。 ※こちらの関連記事もお読みください。 東大発医療スタートアップ「Provigate」関水康伸CEOインタビュー(上):世界で100兆円「糖尿病医療費」を抑制する「行動変容」の力