プレミアリーグ開幕3連勝で注目のリバプール 林陵平がアルネ・スロット新監督の戦術を徹底解説
【さまざまなプレーがきちんと設計されている】 相手によって形を変え、ゆっくり前進しながら攻撃もできるし、今までどおりの縦の速さも使える。これが今のリバプールの強さです。 ソボスライは昨シーズンの4-3-3のインサイドハーフから、4-2-3-1のトップ下に入ったことで、広大なスペースを自由に動けるようになり、彼の活動量や力強さが出ている。彼のよさが引き出され、チームのキープレーヤーになっています。 ボランチのフラーフェンベルフも、昨シーズンは自分のよさを出せなかったところ、スロット監督に変わってプレーが整理されたことで、彼のよさが色濃く出ています。 崩しの局面では、サラーとディアスのクオリティがあるので突破でき、アレクサンダー=アーノルドも高い位置でゴール前の崩しに関わっています。スロット監督の言葉で「彼(アレクサンダー=アーノルド)は中だけでプレーさせるのはもったいない」というのがありました。高い位置でゴール前の崩しに関わらせることで、アレクサンダー=アーノルドのキックのよさが出ています。 守備面ですが、今季のリバプールは攻撃時に縦の速さだけでなく、ゆっくりボールを保持しながら前進できるようになったので、全体の陣形がコンパクトになっています。そうなるとボールロストしたあとも選手たちの距離が近いので、すぐさま奪い返すカウンタープレスがハマりやすくなっています。 攻撃から守備への切り替えも速く、チーム全体のボールに対する準備や反応も早い。これは、スロット監督も口酸っぱく言っているのかなと感じます。 プレッシャーのかけ方にもいろいろな形があります。例えば、相手の右SBにはディアス、右センターバック(CB)にはジョタ、左CBにはサラーと、右からの3人に対して3トップを当てるケースがあります。この時、左SBに対してはアレクサンダー=アーノルドが縦スライドして捕まえにいく。そして、後ろのDFラインは右にスライドします。 第2節のブレントフォード戦では、このはめ方をしていました。特にサラーが左CBにプレッシャーをかける時に、左SBへパスを通しにくいような角度から詰めにいきます。この状況から相手が中央を通してきた時には、ソボスライが2ボランチへのコースをうまく消していますし、状況に応じてフラーフェンベルフが前に捕まえに出て奪います。 また、ブレントフォード戦ではアレクサンダー=アーノルドが左SBを捕まえにいっていましたが、マンチェスター・ユナイテッド戦ではフラーフェンベルフがスライドして出ていっていました。これは、ユナイテッドの左ウイングにマーカス・ラッシュフォードがいるので、彼にフリーでボールが渡るとやっかいだからです。 またこうしたプレッシャーのかけ方でサラーとディアスを前に残すことで、ボールを奪った時にはふたりが前線のスペースを使えるようにもなっている。 こうしたさまざまなことがきちんと設計されているのがすばらしい。プレシーズンの期間だけでここまでチームとして落とし込んでいるのは、スロット監督、恐るべしですね。