仕事で悩み「適応障害」になった産業医。夜は眠れず、体重は10キロ減…自分が患者になって気が付いたこと
厚生労働省が実施した「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、過去1年間でメンタルヘルス不調により1カ月以上休業、または退職した労働者がいた事業所の割合は、13.5%だったそうです。会社を休むことにためらいを感じてしまう方もいるなか、産業医・心療内科医の薮野淳也先生は「今や休職は、めずらしいことではなくなっている」と話します。そこで今回は、薮野先生の著書『産業医が教える 会社の休み方』から「正しく、適切で、安全な」休み方を一部ご紹介します。(構成/橋口佐紀子) 【書影】数々の企業と実例を見てきた医師が語る「正しく、適切で、安全な」休み方とは?薮野淳也『産業医が教える 会社の休み方』 * * * * * * * ◆適応障害の4つのサイン 適応障害とは、生活のなかで何らかの外的なストレスがあって、3か月から6か月経っても慣れることができず、日常生活に支障をきたすほどの心身の症状が出る病気です。 適応障害が生じる原因は人によっていろいろですが、表れる症状はだいたい一致しています。 私が診察のときに必ず聞くのは、次の4つです。 「食事はとれていますか?」 「眠れていますか?」 「休みの日はどうやって過ごしていますか? 出かけていますか?」 「土日にも気分が落ち込むことはありますか?」 食欲がなくなることは健康な人でもときにあると思いますが、体重が減るほど食事がとれなくなるのはやはり問題です。
◆適応障害になって分かったこと 実は私自身も、クリニックを立ち上げるときに適応障害になりました。産業医の仕事を続けつつ、併設するフィットネスジムも同時に立ち上げたので、やるべきことも考えるべきことも多すぎて、参ってしまったのです。 当時は、医師である自分がフィットネスジムまで立ち上げるなんて、うまくいくわけがないじゃないか、と不安にもなりましたし、ノウハウはないので初めてのことの連続。 「明日は何をしよう?」「どの問題から片づけよう?」と一日中絶えずフルに頭を働かせている状態になり、夜は眠れず、食事量も減って、気づけば体重が10キロほど落ちていました。 ただ、自分自身も“患者”になったことで、いい勉強になりました。自分でいうのもなんですが、体力にも気力にも自信のあった自分でも適応障害になったのです。やっぱり誰しもなり得るのだと分かりましたし、この経験がきっかけで、睡眠の大切さが身に染みて、眠れないときには素直に薬に頼ろうと睡眠薬を使うようになりました。