時計好きなら知っておきたい、腕時計のデザイン史をキーワードを交えて解説
Keyword:機能主義 機能性を最優先したデザインが必要であるという考えは20世紀に広く通じた。装飾にはなんの機能もないとして否定的な立場をとる、建築の分野で多く使われる用語。バウハウスのスローガンにも採用された「機能がフォルムを決定する」は、そもそも機能主義の建築家であるルイス・サリヴァンの言葉に由来するもの。 「落としても壊れない丈夫な時計」という一点突破のコンセプトで誕生したカシオの「G-SHOCK」は、強さのために一切の無駄を省いた角型フォルムを採用した。腕時計としては異端のデザインが、今日にまで続く大ベストセラーに。
Keyword:近未来主義 1950年代後半から60年代にかけて、それまでの文脈からはまったく異なった未来的(フューチャリスティック)デザインが誕生した。まだクオーツが登場する以前に、電池で駆動するエレクトリックウォッチは、針すら不要のデジタル表示が可能で「時刻を知らせる」表現方法すら根本から変えた。 LED式デジタルウォッチは、スペースエイジを代表する未来の時計と目された。宇宙時代のギアを思わせるデザインの「ハミルトンパルサー」は多くのセレブリティやファッショニスタを虜にした名品で、2020年に復刻。
ポップアート&ポストモダン(1960年代~)
その反面、ポップアートもしくはポストモダン的な腕時計が一般の支持を受けたことも見逃せない。クオーツ時計の普及は革命的で、大量生産によって存在感を増し、デザインの自由度を高めた。80年代にはキース・ヘリングのグラフィックを採用したスウォッチがブームとなったように、ポップアート、ポップカルチャーとも結びついて大成功を収めたのである。機能主義やモダニズムに反発する動きとしての腕時計のポストモダニズムからは、デザイナーが次々とスポットライトを浴びた。
Keyword:ポップアート・ポストモダン 大量生産・大量消費の社会をテーマとした現代美術の潮流であるポップアートと、脱近代主義としてのポストモダン。どちらも20世紀の半ば以降に盛り上がったムーブメントであるが、腕時計のデザインに関しては機能主義・合理主義に対するアンチテーゼとして、色やかたちの多様性や装飾性が主張されていた。 他のプロダクトデザインと同様に、機能主義一辺倒への反動として始まった腕時計のポストモダニズム。 赤、青、黄の三原色を取り入れた、カラフルなアラン・シルベスタインの腕時計が話題を呼んだ。