時計好きなら知っておきたい、腕時計のデザイン史をキーワードを交えて解説
ミッドセンチュリー(1940年代~)
40年代から60年代にかけては、ミッドセンチュリーデザインが花開く。第2次世界大戦後、新素材を用いた形状や鮮やかなカラーの工業製品が大量生産されたが、腕時計も例外ではなかった。ミッドセンチュリーの腕時計デザインには、時期によって多様性がある。 代表的な50年代の流儀は凸型のボンベダイヤル、下向きに曲げた時分針と秒針、ドーム型の風防ガラスなど、今日よく復刻されるレトロモダンなデザインだ。
Keyword:ミッドセンチュリー イームズに代表されるように、おもに家具デザインなどで顕著になったモダンデザインのブーム。中心地となったのは第2次世界大戦後のアメリカで、この国が戦場とならなかったために余力をもっていた工場が、FRPやアルミなど当時の新素材でモダンな形状、ビビッドなカラーの製品の大量生産を行った。 ミッドセンチュリー期に発達したエレクトロニクス技術は、腕時計デザインの可能性を拡張。電池駆動の腕時計は丸型に依存せず、フォルムは自在。ハミルトン「ベンチュラ」は俳優エルヴィス・プレスリーも愛用。 1960年代を代表するデザインのひとつが、オーバル型のケースフォルム。ラドーの「ジ・オリジナル」のルーツである、62年誕生の「ダイヤスター」は、面積の広い楕円形ベゼルが特徴の“バレルライン”を採用した。
機能主義・近未来主義(1950・60年代~)
一方では初めて音叉で精度をコントロールするエレクトリックウォッチが登場し、50年代、60年代の近未来的なデザインと結びついた。これらの腕時計は、今日レトロフューチャーとして再評価されている電子回路を露出させた文字盤や、初期のLEDデジタルウォッチに特徴的である。 モダンデザインは一部で先鋭化し、70年代以降は極めてファンクショナリズム=機能主義的な腕時計の誕生にもつながっていく。装飾的要素を廃して機能を最優先した腕時計が一世を風靡し、異形の腕時計は機能が美を生み出すという理論武装を行ったのである。