時計好きなら知っておきたい、腕時計のデザイン史をキーワードを交えて解説
Keyword:アールデコ 20世紀初期のアール・ヌーヴォーと入れ替わるようにヨーロッパを席巻した芸術潮流で、語源は1925年のフランス・パリで開催された万国博覧会、通称「アールデコ博覧会」。その後はアメリカに伝播し、ニューヨークのクライスラー・ビルの建築などを代表とする「アメリカン・デコ」は30年代に最高潮に達した。 アールデコに直接関わった時計ブランドといえばカルティエ。1904年にルイ・カルティエが有名な飛行士アルベルト・サントス=デュモンのために製作した「サントス」(11年に製品化)には、そのデザインの特徴が見える アールデコの腕時計は欧州からアメリカへ。活気あふれる「狂騒の20年代」を象徴する、ドライバーのために文字盤を傾けた時計もヴァシュロン・コンスタンタンで製作された(「ヒストリーク・アメリカン 1921」として復刻)。
バウハウス(1910年代~)
同時期にドイツで誕生したデザイン潮流がバウハウスである。1919年にヴァイマールに設立された造形学校バウハウスはモダニズムの芸術とデザインの発展に寄与した。合理性を重視する理念はモダンデザインの原点であり、33年にナチスの圧力により閉鎖されたが、同時期以降の時計デザインにも決定的な影響を与えている。 有名なモットーである「機能がフォルムを決定する」は多くのブランドが取り入れた。シンプルな丸型のフォルム、装飾を排除した文字盤、実用性を強調した視認性の高い針、直線的なバー型アワーマーカー、幾何学的なタイポグラフィ、正確な時間表示など、整理された要素で構成されるモダンデザインは、バウハウスが原点である。
Keyword:バウハウス ヴァイマールに設立された造形学校バウハウスで発祥した芸術・デザインにおけるモダニズムが、その後世界を席巻。合理性を追求したデザイン理念は同調者を増やし、ナチスの圧力により1933年に閉鎖された後も、迫害を逃れて他国に亡命した教員らによって継承され、現在でも信奉者は多数。 1932年に誕生したパテック フィリップのドレスウォッチ「カラトラバ」コレクション。「機能がフォルムを決定する」という、バウハウスの理念に従って装飾的要素を極力排除したデザインを採用、現在まで息づいている。