【箱根駅伝】当初は"夢物語"だった6区の56分台を実現 MVPの青学大・野村昭夢、足の裏に水ぶくれができながら駆け下りた
第101回箱根駅伝は、青山学院大学が2年連続8度目となる総合優勝を飾った。特殊区間の5区山登りで若林宏樹(4年、洛南)がトップを走っていた中央大学をとらえ、復路スタートの6区山下りで野村昭夢(4年、鹿児島城西)が初の56分台をマーク。ともに区間記録を塗り替える快走で、流れを引き寄せた。最優秀選手に贈られる金栗四三杯と新設された大会MVPの両方に選ばれた野村は「ダブル受賞できると思っていなかった」と喜びを口にした。 【写真】往路優勝のフィニッシュテープを切った若林宏樹を受け止める鶴川正也ら
3区を終え「デッドゾーンに入りかけた」
「大手町で笑おう」というチームスローガンのもと、2区に前回も2区区間賞の黒田朝日(3年、玉野光南)、3区に今季の出雲駅伝と全日本大学駅伝でともに区間賞を獲得した鶴川正也(4年、九州学院)、4区に前回優勝の立役者・太田蒼生(4年、大牟田)という主力を並べた青山学院大。1区を担ったのは、トラックシーズンは1500mで実績を残し、前回の箱根駅伝でアンカーを担った宇田川瞬矢(3年、東農大三)だった。 原晋監督は「当初は荒巻(朋熙、3年、大牟田)を使う予定で1年間準備していたんですけど、割と長く故障が続いて、11月後半ぐらいから宇田川にしようと。これまた足の状態が悪くて100%じゃないという中で、スローペースになってほしいと願っていました」と起用の意図を明かした。その1区では、スタート直後に中央大学の吉居駿恭(3年、仙台育英)が飛び出し、関東学生連合の亜細亜大学・片川祐大(4年、報徳学園)も抜け出した。ただ、ライバルの駒澤大学と國學院大學は3番手集団でレースを進め、宇田川はトップと1分44秒差の区間10位で黒田に襷(たすき)をつないだ。 2区の黒田は前半からハイペースで刻む他校のエースたちに惑わされず、自分の走りに徹した。14km付近の権太坂に入ってから、前との差がみるみると縮まり「動きもよくなってきたので、これはいける」。2021年の第97回大会で東京国際大学のイェゴン・ヴィンセント(現・Honda)が出した1時間05分49秒を切る1時間05分44秒で3区に入った。 最初で最後の箱根路となった鶴川は本来の力を発揮しきれず、区間4位。太田に襷が渡った時点で、先頭の中央大とは2分24秒の差がついていた。原監督は「いわゆるデッドゾーンに入りかけた」。ただ、区間記録の更新を狙っていた太田は「前を追いかけることしか考えていなかった」。2年時には駒澤大の鈴木芽吹(現・トヨタ自動車)との競り合いを繰り広げたこの区間。「2年前の感覚よりも速く走っていけば、区間新に近づける」と信じながら走り、中央大との差を45秒差まで詰めた。往路優勝の仕上げは若林。自身3度目となる5区山登りを冷静に、そして楽しんで走りきり、区間記録を3秒更新。2位の中央大とは1分47秒差をつけて復路に入った。