センバツ高校野球 「3年生の夢」胸に挑む 昨夏コロナに泣いた常葉大菊川 /静岡
◇新チーム始動後も共に練習 3年生のためにも勝ちたい――。3月18日開幕の第95回記念選抜高校野球大会への出場を決めた常葉大菊川。昨年秋の東海大会で準優勝を果たす原動力となったのは、新型コロナウイルスの集団感染で、夢舞台に挑戦することすらかなわなかった先輩たちへの思いだった。【皆川真仁】 プロ野球・北海道日本ハムファイターズに入団した安西叶翔(かなと)ら3年生の好投手をそろえた常葉大菊川は、昨夏の県大会の優勝候補と評された。初戦はエース安西が8回無失点と好投。2回戦もコールド勝ちし、前評判通りに好発進した。 ところが、2回戦翌日から、当時約40人が共同生活を送っていた寮で、新型コロナの陽性判定が相次いだ。陰性の寮生も全員が濃厚接触者とみなされ、主力選手が出場できない事態に。寮生以外で、陰性が確認された11人で何とか4回戦に臨んだものの、勝利は遠かった。 高校卒業後も野球を続ける3年生は、昨年8月3日の新チーム始動後、後輩たちと練習を共にしてきた。コロナ感染で3回戦以降ベンチ入りができなかった最速148キロ右腕、伊藤大朗(3年)は「次のステージで活躍してプロにいけるように」と前を向き、センバツを目指す後輩のために打撃投手や球拾いも買って出た。自身もコロナに感染し途中離脱した石岡諒哉監督(33)は「3年生には申し訳なかった」としつつ「最後の夏の悔しさを乗り越えて前向きに練習する姿を後輩たちに見せてくれた」とたたえる。いつしか、「3年生のために」が1、2年生の合言葉になっていた。 迎えた昨秋の大会。3年生がスタンドの最前列でメガホンをたたくなか、チームは接戦を粘り強く勝ち上がった。諏訪快人・内野手(3年)は「自分のことのようにうれしい」と目を細めた。 平出奏翔(かなと)主将(2年)は「3年生がいなければ絶対にここまでこられなかった。先輩たちの分までセンバツで戦いたい」と力を込める。 3年生は進学する大学などの練習に合流するため、間もなく慣れ親しんだグラウンドを離れる。石岡監督は「3年生のひたむきな姿に私自身も勇気をもらった。本当のチーム力が問われるのはセンバツから」と気を引き締める。