大混乱を招いた併殺判定問題はヤクルトへの謝罪と“元阪神”の当該審判への“甘い”口頭厳重注意だけで済まされる問題なのか
この嶋田審判のことを覚えている阪神ファンはいるだろう。1990年に王子製紙米子からドラフト5位で阪神に入団した“剛球右腕”で、ルーキーイヤーから1軍抜擢され、先発起用された1993年にはプロ初勝利もあげている。その後は泣かず飛ばずで1996年には中継ぎとして22試合に登板したが、1998年に戦力外となり引退。すぐさま審判としてのセカンドキャリアを目指し、翌年にセの関西審判部に入局、2002年から1軍の審判を任された。今年で54歳になるベテラン審判で、NPBの公式サイトによると、昨年までで1363試合に出場。2019年には、阪神ー巨人戦で控え審判として再開後の走者のポジションについて的確な助言を行い「ファインジャッジ賞」を授与され、今季からはサブクルーチーフに昇格している。 それだけのキャリアのある嶋田審判が、タッチプレーか、フォースプレーかの判断を下す上で重要な打者走者のセーフ、アウトの判定を見落としていたということはありえない。 二塁ベースの内側にいたため、ポジション的には、一塁の塁審は視界に入っていたし、まして、その後、一塁手の福田が大きな声で二塁でフォースアウトにすべきことを指示しているのだ。 「パニックになっていた」との説明もあったそうだが、おそらく、中日の守備陣が、すぐにフォースプレーをせずに複雑なランダウンプレーを継続させたので、混乱してアウトだと思い込んでしまったのだろう。 不手際を起こした嶋田審判へのペナルティは口頭での厳重注意だけで済まされるそうだが、事実上の“誤審”である。ヤクルトへの謝罪と、この“”極甘”ペナルティだけで済まされる問題なのだろうか。 二死一、三塁から試合を再開していても、ヤクルトが同点、あるいは逆転していたかどうかはわからないが、ヤクルトは重要な優勝争いの局面の中で1敗を喫し、なにより人数制限がかけられた中での貴重なチケットを持ってバンテリンドームに駆け付けたヤクルト、中日の両軍のファンを試合終了後もスタンドで待たせるという“迷惑”をかけた。責任審判の丹波球審の場内アナウンスも説明不足で、興行の価値を著しく損ねた。リクエストの導入から、誤審は減ったが、今回の一件で審判の権威、信頼は失墜したと言える。 そして報道によると、そもそも嶋田審判は、試合後に「(京田が)ベースを踏んだことは確認していない」と語り、そういう説明はしていなかった。この日の事情説明によると、「確認していなかった」のは、フォースプレーではなく、打者走者のアウト、セーフだったということになるから、この事後の対応も問題だ。