温暖化で首都が半分沈む島国ツバル、人々はどうするのか実際に現地に行って聞いてみた
同じ問題で何が起こるかの例として多くの人が注目、「移住が前提だという考え方はできません」
ハワイとオーストラリアの中間に位置するツバルは、人口1万2000人にも満たない小さな島国だ。平均海抜は3メートル以下で、気候変動による海面上昇の危機にさらされている。全国民の半分以上が住む首都フナフティは、2050年までに潮位の上昇により50％の土地が浸水すると予測されている。 ギャラリー：温暖化で首都が半分沈む島国ツバル、人々はどうするか現地で聞いてみた 写真4点 いずれ世界のほかの沿岸国も、同じ問題に直面することになる。そうなったとき何が起こるのかを示す例として、ツバルは多くの人々の注目を集めている。世界銀行が2021年9月に発表した報告書は、2050年までに世界で2億1600万人以上が気候変動によって国内移住を余儀なくされると予測している。 だが、国土がなくなったらその国はどうなるのだろうか。不安定な位置に立たされたツバルの人々は、自分たちの存在そのものを脅かすこの問題に、いやおうなしに向き合わざるをえなくなっている。 ツバル語で「土地」を意味する「フェヌア」という言葉は、物理的な土地という意味だけでなく、自分のアイデンティティに根差した所属意識という意味もある。ツバルでは、土地は共同で所有され、家族のなかで親から子へと受け継がれている。人々は、自宅玄関のすぐ横にある墓に祖先を葬る。ツバル人にとって土地とは、親族が眠り、歴史と伝統が根付いている場所であり、そこを離れるべきか否かは、そう簡単に答えが出る問題ではない。 「移住が前提だという考え方はできません」と、ツバルの気候変動相であるマイナ・タリア氏は言う。「そうは言っても、ある朝起きてみたら人口の半分が海にさらわれていたとなったらどうすればいいでしょう。誰を責めたらいいのでしょうか」 さらにそれは、ツバル国民一人ひとりが個人的な問題として考えなければならないことでもある。自分は残るべきか、それとも離れるべきか。より安定した暮らしを求めて島を離れることを検討している人もいるが、残るつもりだという人も多い。 「確かに私たちは気候変動の影響を受けています。それでもここに残りたいのです」と非政府組織「ツバル家庭健康協会」のプログラムオフィサー、フェヌアタポ・メサコ氏は話す。「別の国で生きるツバル人になりたくはありません。ツバルで生きるツバル人でありたいのです」
