温暖化で首都が半分沈む島国ツバル、人々はどうするのか実際に現地に行って聞いてみた
気候変動の最前線
飛行機でツバルに近づくと、広大なマリンブルーの空の下、緑色の三日月のようなフナフティ環礁が見えてくる。 9つの島をすべて合わせたツバルの国土面積は約26平方キロメートルだ。気候変動の最前線という以外に、ツバルは2つの点で知られている。世界で最も訪問者が少ない国の一つであるということ。そして、インターネットのドメインサフィックスである「.tv」を所有していることだ。これが、領海の漁業権販売に次いで国の最も大きな収入源になっている。 フナフティ国際空港に飛行機が着陸する数分前、滑走路を空けるよう人々を促すサイレンが町中に鳴り響いた。国土が極端に狭く、フライトも週4便しかないため、滑走路は時間帯によって車道になったり、バレーボールやピクニックを楽しむのに使われたりしている。 気候変動は、人々の生活のあらゆる側面に入り込んでいる。海水が土壌に浸み込んでいるため、ツバル料理に使われるタロイモやパンノキ、ココナツといった作物が育ちにくくなっている。「キングタイド」と呼ばれる大潮は近年激しさを増し、月に1度は滑走路から民家まで水浸しになる。 「昔の生活は、今とは違っていました」と話すのは、25歳のメニメイ・メルトンさんだ。「幼い頃に気候変動のことを教えられましたが、実際にそれが自分たちにどう影響するのかは、大人になるまで見えてきませんでした」 ツバルの名が世界に知られるようになったのは気候変動のせいだが、自分たちにはほとんど責任のない危機だけに関連付けてツバルを定義してほしくはないと、住民たちは感じている。非営利団体「世界資源研究所(WRI)」が運営するウェブサイト「クライメートウォッチ」によると、ツバルは1人当たりの二酸化炭素排出量が最も少ない25カ国のうちの一つだ。 ツバル人にとって、気候変動はどこか遠い国で起こっている現象ではない。今すぐにでも対応しなければならない問題だ。しかしツバルには、潮位の上昇以外にもたくさんのものがある。 フナフティの通りを歩いていると、教会の讃美歌のメロディと民家のカラオケの歌声が入り混じって耳に入ってくる。また、わらぶき屋根の集会所でビンゴを楽しむ40人の老人たちや、ツバルの民族舞踊であるファテレを練習する20代のグループに出会うこともある。 ツバルでは、価値観はただ語られるだけでなく、実践されている。たとえば、「良い近所づきあい」を意味する「ファレピリ」という言葉を、様々な形で目にすることができる。ツバルには犯罪がほとんどなく、ホームレスもいない。地域全体で食事を持ち寄ったパーティが開かれることも多く、外交政策にもそれは現れている。ツバルをツバルたらしめている文化は、簡単に別の大陸に持っていくことはできない。