ヤンキース、ジャッジの気持ちがにじんだ全力疾走の内野安打
米大リーグのレギュラーシーズンではア・リーグ最高勝率で東地区を制し、プレーオフは地区シリーズからの登場となったヤンキース。ワイルドカードシリーズを突破したロイヤルズを本拠地に迎えての第1、2戦は1勝1敗で終えた。やや気がかりなのは、58本塁打、144打点で2冠のアーロン・ジャッジ外野手(32)の状態。2試合で7打数1安打、2四球、4三振と、本来の打棒が影を潜めている。(時事通信ニューヨーク特派員 岩尾哲大) 【写真】ロッキーズ戦で今季50号を放ち、喜ぶヤンキースのジャッジ=8月 ◆地鳴りのような歓声 昨季は地区4位に終わったヤンキースにとって、2年ぶりのプレーオフ。10月5日の地区シリーズ初戦、ヤンキースタジアムは待ちに待ったと言わんばかりの熱気に包まれた。試合前のメンバー紹介。ジャッジの名前が呼ばれると、ひときわ大きい、地鳴りのような歓声が沸き起こった。 一回、いきなり無死二、三塁のチャンスで打席が回る。しかし、フルカウントからチェンジアップにタイミングが合わず三振。五回は無死一、二塁でボールを見極めて四球を選び好機を拡大させたが、六回は1死一、二塁で空振り三振に倒れた。二転三転のシーソーゲームの末、チームは6-5で勝利。だがジャッジは4打数無安打、1四球、3三振だった。 7日の第2戦。この日も一回、無死一、二塁の先制機でジャッジが打席に立った。しかし1ボールの後、3球続けて空振りしての三振。ヤンキースは後続も倒れて無得点に終わった。最終的には2-4で敗戦。主砲に一本が出ていたら、全く違う展開になっていたかもしれない。 ◆過去のプレーオフで不振も シーズン50本塁打は今季3度目の達成となり、メジャー随一の強打者と言えるジャッジも、実は過去のプレーオフの成績は良くない。ア・リーグ新記録の62本塁打をマークした2022年、ジャッジはプレーオフ9試合の出場で36打数5安打の打率1割3分9厘、2本塁打、3打点という不振。特にアストロズに一度も勝てず4連敗で敗退したリーグ優勝決定シリーズでは、16打数1安打の低迷だった。 今回の地区シリーズ第2戦の後、「打率10割でないのなら、気分が良いものではない」と独特の言い回しで語ったが、本調子ではないのは確かなのだろう。打席に立つだけで「M.V.P!」コールが巻き起こることもあるスーパースター。期待の大きさとも闘う。三回にはフェンス際まで飛ばしたが、右飛。もう一伸び足りなかった。 ◆初ヒットは内野安打 このプレーオフで初ヒットが出たのは3点を追う八回だった。三塁への内野安打。2メートルを超える大きな体で一塁へ全力疾走し、セーフとなると、パチンと手をたたいた。代名詞のアーチではない。ただ、ワールドシリーズで最多27度の優勝を誇る名門のキャプテンとして、自らを、チームを鼓舞するような姿を示した。 9日(日本時間10日)からロイヤルズのホーム、カンザスシティーで2試合を戦う。連敗すれば、シーズンが終わる。ジャッジは「後ろに続く選手のために塁に出続けていきたい。彼らが塁に出たら、ホームインさせないといけない」と改めて決意。ブーン監督の信頼は当然揺るがず「最初の2試合で3度出塁した。簡単なことではない。打撃は失敗がつきもののゲームだ。私は彼に賭け続ける」と強調した。 今季は8月25日に50、51号を放ってから16試合続けて本塁打が出なかったこともあるが、波に乗れば手を付けられない状態にもなる。敵地で本領発揮なるか。ヤンキースの行く末は、ジャッジのバットに託されている。