「青木率」でみる安倍内閣 まだ安泰? 改憲と解散のジレンマ
一方で、改憲を実現するためには早期解散は得策ではない。現在、改憲に積極的な勢力が衆参議席の3分の2を占めているが、支持率低下傾向を前提とすれば、次期の衆院選では改憲勢力が3分の2を割ってしまう可能性が高い。 要するに、安倍政権は、衆院選での大敗を防ぎたければ早期解散が必要だが、解散してしまうと改憲が遠のくというジレンマを抱えている。以前のシナリオでは解散と改憲を同時に進めることが可能だったが、現在はいわば解散か改憲かの二者択一を迫られている状況である。 このジレンマの中、安倍政権はどのような選択をするのだろうか。 一部では、安倍首相が総裁3選をあきらめて誰かに政権を禅譲し、代わりに改憲への協力を取り付けるというシナリオも語られている。安倍首相は、来年の総裁選で3選されれば戦後最長政権となる可能性が射程に入る(2019年8月には、これまでの戦後最長である佐藤栄作首相の在任日数を超える)。それよりも、現行憲法下での初の改憲を成し遂げて歴史に名を残すことを選ぶのではないかということである。 安倍首相の師といえる小泉元首相は、5年5か月の長期政権の間ほぼ一貫して高支持率を維持し、続投を望む声もある中、自らの言葉を違えず予定どおりに退陣した。この潔さがある種の「小泉神話」を生み出すことともなった。安倍首相が小泉元首相のこのスタイルを見ならうとすれば、「改憲花道論」も一定の現実味を帯びてくるだろう。
------------------------------ ■内山融(うちやま・ゆう) 東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など