石田ゆり子がモネの睡蓮を巡る、パリのマルモッタン・モネ美術館とジヴェルニーの庭園の旅。
● モネの終の住処、ジヴェルニー庭園を訪ねて。
石田さんは〈マルモッタン・モネ美術館〉で見た睡蓮の連作が生まれた場所をひと目見ようと、パリから車で1時間半ほどのノルマンディー地方ジヴェルニーへ向かった。 モネは自然にあふれたこの地を気に入り、43歳の時に家族とともに移り住んだ。以来、自身が指揮をとって庭を整備し、敷地を拡張して池を設けた。没後は一時放置されていたが、1970年代に再整備され、1980年から一般公開されている。約15ヘクタールの広大な敷地にポピーやダリヤ、クレマチスなど四季折々の無数の草花が植えられ、バラのアーチや竹林の小径、睡蓮の池、藤がからまる日本風の橋などが設けられ変化に富んでいる。
「完璧に整った花壇というよりも、風に倒れた草花がそのままになっていたり、自然にあるがままの風情で手入れされているのが素晴らしいです。今回は特別に閉園後に入らせていただいたので、誰もいない夕暮れ間近の池を眺めていると、モネの視線を追体験するような気持ちになれました」(石田さん)
季節や天気、時間帯によって同じ景色が異なる色合いを帯びる。その一瞬を逃さず捉えるために、モネは庭にカンヴァスを持ち出し夢中になって絵の具を塗りつけたのではないだろうか。速描きの荒いタッチや薄塗りの作品は当時のフランスの美術評論家の間ではほとんど評価されなかったが、50年代になってアメリカで抽象美術との共通性からモネの睡蓮は一気に注目を集めるようになる。言ってみれば時代を先取りした作風は、このフランスの田舎ジヴェルニーの庭から生まれたのだ。
クロード・モネの家と庭園 Maison et jardins Claude Monet, Giverny モネが43歳から86歳で亡くなるまでを過ごした邸宅と庭が1970年代後半に修復され、80年から一般公開された。2階建ての屋敷内も見学できる。鉄道でパリ=サンラザール駅から約1時間でジヴェルニー=ヴェルノン駅へ、そこから有料のシャトルバスがある。●84 rue Claude Monet, 27620 Giverny TEL +33-2-32-51-28-21。9時30分~18時(最終入場は17時30分)。冬季(11月~3月)休業。入場料11ユーロ。公式サイト