6000人の応募から、残ったのは18人だけ…アリババで日本事業のトップに上り詰めた日本人が明かす「グローバルに生き残るための思考法」
兆単位の売り上げを記録するアリババのすごさ
CEIBSで学ぶ大山さんが衝撃を受けたのが、約14億人の人口を背景に、桁違いの規模でビジネスを展開する、巨大企業アリババだった。 「中国では11月11日を1が四つ並ぶことから『独身の日』と呼びます。この独身の日は、アリババをはじめとしたネット通販各社が大規模な値引きセールを繰り広げる商戦日でもあり、この日1日、アリババ1社だけでも数兆円規模のおカネが動く。衝撃を受けました。もう『なんじゃこりゃ』ですよね」 たとえば、2017年にはアリババ1社が、独身の日一日で1682億元(当時のレート換算で約2兆8594円)の取扱高を記録している 。比較対象として、日本大手ECである楽天の2017年1年間の国内EC流通総額(取扱高)を見てみると、3.4兆円。つまり楽天が1年で稼ぐ金額をアリババはほぼ1日で稼いでしまったことになる。大山さんが衝撃を受けるのも当然だ。 当時のアリババの勢いを肌で感じ、衝撃を受けたのは、大山さんだけではなかったようだ。 「CEIBSにはヨーロッパ、アジア、アフリカ、世界各国から優秀な学生が集まっており、その中でも特に優秀な学生たちが、次々にアリババに入社していきました。私自身、アリババのビジネスの規模にも惹かれましたし、なにより、CEIBSで出会った優秀な人たちと一緒に働きたいと思うようになりました」 大山さんが目を付けたのは、当時始まったばかりの、世界各地の優秀な人材の採用とリーダー候補への育成を目的とした人材開発プログラム「アリババ・グローバル・リーダーシップアカデミー(AGLA)」だった。
全世界6000人超の中から18人の狭き門
大山さんがCEIBSを卒業したのが2018年4月、その年の10月、AGLAの新規募集が始まった。ハーバード大やオックスフォード大など、世界の著名大学を出たエリートとたちに交じり、日本に帰国していた大山さんも手を挙げた。合格者18人に対し、応募者は6000人超、倍率約300倍以上の狭き門だ。 「受かるかどうかはさておいて、一度は応募してみたいと思っていました。妻にも、『応募して、試験だけは受けてみようと思う』そう伝えていました。中国語もまだビジネスで使えるレベルではありませんでしたから。 複数回英語で面接を受け、なんとか最終面接まで残れました。ただ、最終面接では、少し中国語の能力も試されまして。面接も残すところあと30分くらいになったときでしょうか。面接官から中国語で質問されたんです。 中国語面接の序盤は難しい質問はなかったので、回答できていたのですが、徐々に高度な質問になり、ついに何を言っているかわからなくなった。とはいえ、黙ってはいられない。そこで『自分の長所や短所を聞かれているのだろう』と予測し、私のこれまでの経験を交えながらしゃべり始めました。 しばらく話していたら面接官から『そうではなくて、私は無印良品のような日本企業がなぜ、中国で成功したのかを聞いているのですが……』と言われて。頭が真っ白になりましたよ」 そんなトラブルはあったものの、大山さんは見事AGLAに日本人で初めて合格し、2019年5月8日アリババグループに入社、グループの物流部門である菜鳥(ツァイニャオ)に所属することになった――。