自分の“芸風”に関わる本と出合い、衝撃も 「ダ・ヴィンチ・恐山」品田遊を作った5冊
『中二階』は、翻訳家の岸本佐知子さんの名前を介して存在を知りました。中学生の頃に、通っていた美容院の美容師さんから岸本さんのエッセイについて教えてもらい、以来、岸本さんが訳す本は全部おもしろいな、と。『中二階』では、たとえば「炭酸水にストローを入れるとストローに気泡がつきストローが浮いてくる」のような細かな描写が何ページにもわたり書かれている。注釈がつき、その注釈にもまた注釈がつく、その細かさに感銘を受けましたね。 いまの自分の“芸風”に関わっているかもしれない、と感じるのは『深夜の弁明』。文体こそが内容を規定し、同時に内容が文体を誘導するといった関係の面白さに触れ、中学生だった私は絶大な影響を受けました。 改めて振り返ると、内容以上に「コンセプト」に惹かれ本を読んでいることが多いかもしれないですね。企画性が際立っているものが好きで、「そのテーマを『本』という一つの形にまとめたんだ」というところに興味があるのかもしれません。 そのうえで、文章の息遣いやリズム感が一致していると一気に読んでしまう。レトリカルな文章はどちらかというと苦手で、耽美的なものに憧れがありつつも、わりと無機質な文章のほうが自分は好きなのではないか、という気がしています。 (構成/ライター・古谷ゆう子) 根源的な答えを得る 舞台は100年後近未来のSF小説 『ここはすべての夜明けまえ』間宮改衣/早川書房 良い文章とは? 悪い文章とは? 『日本語の作文技術』本多勝一/朝日文庫 『倫理とは何か』永井均/筑摩書房 『中二階』ニコルソン・ベイカー/ 白水社『深夜の弁明』清水義範/講談社 ※AERA 2024年11月11日号
古谷ゆう子