命をも左右……避難を遅らせる「正常性バイアス」 濁水が迫っても「死ぬわけない」“自分は大丈夫”のワケ【#みんなのギモン】
■「家族は全然現実味がなかった」
小野解説委員 「説得の末、なんとか避難に応じたといいます。当時の様子を、改めて丸畑さんに聞きました」 丸畑さん 「家族は全然現実味がなくて、普通の日常の朝という感じでした。父も母も弟も、普段通りの。母もテレビを見ながら化粧しているみたいな。動画を見せたら『わーっ!』とびっくりはするんですけど、『ここまでは水はこないだろう』みたいな」 小野解説委員 「我々がこうして映像を見ると、『危険が迫っている。なぜ逃げないのだろうか』と思いますが、本人は『自分は大丈夫だろう』と思ってしまっています。これが正常性バイアスと言われるものです」 森アナウンサー 「第三者であればまだしも、自分の息子さんが呼びかけているにもかかわらず全く耳を貸さないことに驚きを隠せないですね」 山崎誠アナウンサー 「意味こそ少し違いますが、百聞は一見に如かずという言葉もあります。言われたり聞いたりしても、結局自分が見たものにしか実感が湧かないというのはあるかもしれませんね」
■正常性バイアスが生まれる背景
小野解説委員 「なぜ正常性バイアスが生じるのか。災害時の避難に詳しい、日本大学危機管理学部の秦康範教授に聞きました。『何かが起きて危険になるかもしれない』と普段から考えていると、心配で生活できなくなってしまう」 「そうならないために、ストレスから自分を守るために、ある程度『自分は大丈夫だ』との意識が働く。これは正常なことだそうです。ただ人は日常生活で危険な状態になることがほとんどないため、『今がその時だ』という認識を持ちにくいといいます」 忽滑谷アナウンサー 「私も楽観的な性格というかポジティブに考えがちなので、悩み事の9割は起こらないだろうと思って自分のメンタルを保っているところもあるので、ちょっと耳が痛いなと思います」
■自宅以外の場所に避難しなかった理由
小野解説委員 「実際に自然災害が起きた時、避難したかどうか。避難勧告や避難指示が出ていた地域の住民を対象にしたMS&ADインターリスク総研株式会社の調査(833人が回答)によると、自宅にいて『自宅以外の場所に避難した』と答えたのは16.9%でした」 「あとの8割以上は、家の中の安全な場所にいた、または特に行動を起こさなかったといいます。『なぜ自宅以外の場所に避難しなかったのか』という質問には、約24%の人が『自分は被害にあわないと思った』と回答。正常性バイアスが働いた可能性があります」