世界的数学者も生み出した、60年以上続く学力コンテストの凄み
「この問題をどうやって解くのかさっぱりわかりませんでした。どこから手をつけていいのか」 「大学への数学」で模範解答を確認すると、そこにはシンプルな1行の式と少しの説明、「1」という答えが記されていた。 「これが数学でよく言われる『エレガントな解法』というのかと。なんと数学は面白くて素晴らしい世界なんだとますますのめり込んでいくようになりました」
常に成績上位に君臨、今も残る「伝説」
それから今も「学力コンテスト」に残る「森伝説」が始まる。ネットでは「送った答案のほとんどが満点だった」という噂があるが、森さんは「それは大げさですよ」と苦笑いをして手を振り、「高3で満点は9、8割、2年生からのを入れると半分ちょっとですよ」。 だが毎月発表される席次では常に上位に君臨した。 「森先生がずっと1位を独占しているので、ついに他の解答者から『森君はもう殿堂入りということにして、席次から外してはどうか』という提案が誌面に載ったこともあります。もちろん冗談なんですけれどね」(「大学への数学」編集長の横戸さん) そのなかで、森さんが今も大切に保存している答案がある。150点満点中の145点。だが添削者のコメントにこう書かれていた。 《四の解答の素晴らしさには驚きました。点数は関係なく席次は1番にしておきます》 実際には成績欄で150点の1等の前に森さんの145点が特等として記された。 「満点じゃないのに1番というのは驚きました。でも嬉しかったのは解答が『素晴らしい』と言ってもらえたことですね」 エレガントとたたえられたのである。それは森さんが今も覚えている学コンの問題を見て以来、目指していた到達点だった。 「席次とか全国のライバルとかは頭の中に一切ありません。問題が来たら、ただ目の前の数学にのめり込むだけです。『この問題を解きたい!』と、頭がかっとなるんです。寝ていても問題が頭から離れず、起きて再び取り組むこともよくありました」